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【藤井聡】「談合」の解体を求める米国の外圧の存在を知るべし

「談合」の解体を求める米国の外圧の存在を知るべし


京都大学教授  藤井聡


 「談合」と言えば,昭和の時代にはが「当たり前」だったことを思えば,隔世の感を禁じ得ない.今や「談合=悪」とのイメージは完全に社会に定着してしまった.しかし,「談合」にも良い面もあったことは,普段は口には出来ずとも,多くの方々が肌で感じていることだろう.談合があったからこそ過当競争が回避され,時々の景気変動にも関わらず,皆が助け合いながら,安定的に生業を続ける事ができたのは紛う事なき事実である.

 しかし今やそんな「談合」が捨て去られる同時に,その「良き側面」もまた一緒に捨て去られてしまった.そして多くの中小の建設業者が危機に瀕している.その結果,「現場の職人魂」,「助け合い」,そして,「震災復旧にかけつける気概」といった,日本人ならではの気質や気風,あるいは「文化」が年々蒸発し,時代そのものが無味無臭の薄っぺらいものになりつつある―――多かれ少なかれこんな印象をお持ちの方は,決して少なくはないだろう.

 しかし,なぜそんな事になってしまったのかを,冷静に分析されている方々は限られているのではなかろうか.

 読者各位は,米国の「外国貿易障壁報告書」なるものをご存じだろうか.これは「米国通商代表部」という,米国企業の海外進出を主たる目的の一つとする政府組織が,毎年発行する報告書だ.この報告書では毎年「日本市場の開放」についての「日本政府への要望」があらゆる分野にわたって事細かに記載されている.例えば最新の報告書には,驚くべき事にGaikan や首都高のShinagawa route といった大型プロジェクトの固有名詞までもが明記
されている.

 さてこの報告書,平成一四年には次のような下りが記載されていた.「入札談合の取り締まりを強化するため、米国は、刑事事件としての入札談合に対する警察庁と県警察本部による捜査を強化する新たな計画、公取委と違法の疑いのある談合行為を捜査する他の法執行機関との協力関係の強化、共同して談合行為に参加した入札者に対する罰則の強化と談合者による過剰請求額の全額賠償、および談合行為が成立する機会を減らすためのその他の措置を提案した」.

 米国がなぜ,こんな要求をしたのか―――それは言うまでもなく「談合の風習」は米国企業進出の“邪魔”になるからだ.そもそも日本固有の風習や文化なんてものは皆,米国にとっては単なる「非関税障壁」にしか過ぎないのだ.

 事実,我が国ではその後,偶然か否かはさておき,広く読者各位がご存じの様に,まさに米国の要望通りに「独占禁止法」が改正され,公正取引委員会によってより厳しく談合が取り締まられるようになったのだった.

 そして最新の報告書には,我が国における談合の取り締まり強化がまるで「成果」の様に報告され,今後もさらにこの流れを促進すべく日本側に強く働きかけていく旨が明記されている.

 繰り返すが,建設業界の雰囲気は談合の解体以降,一変した.だとするなら,以上の経緯を勘案するなら,米国の圧力故に,建設業界の雰囲気が根本的に変化したのだ,との解釈も十二分にあり得ることとなろう.

 そうである以上,「今後」の日本の建設業界もまた,米国の圧力によってますます変化していく事も,そして現実に海外企業が本格的に日本に参入してくる近未来もまた,いとも容易く想像し得るのである.

 これこそ「TPP」を初めとする米国との交渉に対して,建設業関係者が最大限の警戒を払わねばならぬ根本因なのだ.

 我々はいい加減「平和呆け」から目覚めねばならない.もしもそれができぬのなら,日本の建設業界はますます厳しい時代を迎え,挙げ句には根底から崩壊する様な事態にすら至り兼ねない――――そんな最悪の事態をあり得べし未来の一つとして引き受ける精神の力量こそが,今我々に求められているのである.

日刊建設工業新聞(所論緒論) 2011.3.30

出典:藤井研究室
http://trans.kuciv.kyoto-u.ac.jp/tba/images/stories/PDF/Fujii/201107-201109/newspaper/kensetsu_20110330.pdf





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【藤井聡】動画「日本復興計画」参議院予算委員会公聴会/平成23年3月23日

緊急提案

日本復興計画

「東日本復活5年計画」と「列島強靭化10年計画」(pdf)

参議院予算委員会公聴会(参院H23.03.23)より、藤井聡教授の部分を抜粋(一部、他公述人含む)。
【東日本、そして、日本の復活を】
  ①日本は復活する
  ②「強靱さ」を目指した復興を
  ③日本復興計画
  ④ふるさと再生
  ⑤財源論
  ⑥TPP
  ⑦列島強靭化10年計画
  ⑧「コンクリートから人」
  ⑨政治決断を
...これらについて、藤井聡教授が語る。




公述録

(平成23年3月23日)

注) ~~を記載した部分は、事後的に適宜付与した見出しである



~~日本は復活する~~

この度は斯様な機会を頂戴いたし、誠にありがとうございます。

ただいま菊池先生が公述なさいました大規模の財政出動、この財政出動のお話をお聞きしながら、私の方からお話したいと考えておりましたのが、先ほど菊池先生がおっしゃった大規模な財政出動の中身、この部分をこの度の大震災をうけて申し上げたいと考えております。

そしてこの度の東日本大震災において犠牲になられた方々のご冥福をお祈り申し上げると共に、被災地の方々に、改めて、お見舞い申し上げたく存じます。

言うまでもありませんが、今何よりも、なすべきことは、被災地の方々に対する救助、救援であります。そしてそれと同時に、我々日本人は、この国難の危機を回避するための方途を、全力で、考えはじめねば、なりません。

ところが、ともすれば、日本はこの瀕死の重傷から、立ち直ることができないのではないか、という様な、漠とした不安、ある種の絶望感をお持ちの方も、少なくはないのではないかとも感じております。

しかも、地震の専門家は、30年以内に、今回のこの大震災の被害をさらに上回るとさえ言われる東海・南海・東南海の各地震が起こる確率が50~87%もあることを明らかにしています。

さらに、この度の大震災の「何倍もの被害」をもたらすであろう、「首都直下型地震」が30年以内に起こる確率が、実に「70%にも上る」ことを明らかにしています。

折しも日本は、かつて世界第2位であった一人あたりのGDPが、長年のデフレ不況のためにいつのまにか20位前後にまで凋落し、経済大国の地位そのものがぐらつき始めているところでありました。

その弱り目に祟り目と言わんばかりに、この度の、巨大震災が、襲ったのであります。そして、さらなる巨大地震の影にも、おびえている、それが、今日の、日本の、ひ弱な、悲しい姿であります。

しかし、それらを全て踏まえてもなお、私は、確信していることがございます。

それは、ここでうろたえず、状況を冷静に判断しつつ、なすべき対策を行うことさえできれば、この国難の危機を回避し、必ずや、我が国は復活できる、ということであります。そして、どのような「国難」をも乗り越えられる様な「強靭な国家」になることができるのだということであります。

では、そのためには、どういう対策が必要なのか。今からそれについてお話いたしたいと思います。



~~「強靱さ」を目指した復興を~~

そもそも、我々日本人は、先の大戦の敗戦後の時代を「戦後」と呼び、「列島改造論」に象徴されるような、「豊かになる!」とのビジョンを掲げ、今日まで努力を重ねて参りました。

そして、豊かさの頂点を極めたバブルが崩壊した後もなお、「豊かさ」に変わる、新しいヴィジョンを持てないままに、今日に至っております。

しかしその間、日本経済はデフレのために凋落し続け、失業率も自殺者数も飛躍的に伸びてしまいました。

そんな時代に、高度成長もバブルも知らない新しい世代が求めているのは、今や既に「豊かさ」ではなく、「生き残ること」そのものとなっていったのです。

それと同時に多くの国民が、リストラや倒産の影におびえております。ここでもまた、多くのの人々が「豊かさ」ではなく「生き残ること」を求めているのです。

そんな時代のただ中に起こったのが、今回の大震災でありました。

そして、この大震災によって、今や、自分自身のみでなく、街や村、そして、日本そのものが「生き残ることができなくなるのではないか」との漠とした不安に、日本中が、決定的に被われることになったのであります。

つまり、我々が、求めているのは、かつて求めていた「豊かさ」では、既にないのです。今必要なのは「何があっても亡びない、永続的な繁栄を続けうる、強靭さ」なのであります。言うならば、「豊かさ」を追い求めた「戦後復興の時代」が、かの3月11日に決定的に終焉したのです。

そして、我々は今、「強靱さ」を目指した、「震災復興の時代」のただ中に、生きることとなったのであります。

だからこそ、「豊かさ」を求めた「列島改造論」に変わる、新しいヴィジョンとして、数々の巨大震災をも乗り越えることの出来る「強靭さ」つまり英語で言いますところの「レジリエンス」、この「レジリエンス」を求める、「列島強靭化論」を、ここに、強く、提案申し上げる次第であります。


~~日本復興計画~~

お手元にお配りしておりますのが、「日本復興計画」の資料でございます。さて、この「列島強靭化論」でありますが、その内容を、「日本復興計画」という「緊急提案書」にまとめております。委員の先生方にはお配りいたしておりますが、国民の皆様も、当方「藤井聡」のホームページにて、公表しておりますので、是非、ご覧ください。

この緊急提案は、二つの計画から構成されております。

一つは、「東日本復活五年計画」、もう一つは、「列島強靭化十年計画」であります。

つまり、5年をかけて東日本を復活し、10年をかけてどんな危機をも乗り越えられる強靭な国家をつくりあげる、それを目指すわけであります。





~~ふるさと再生~~

まず、前半の「東日本復活五年計画」でありますが、これは、東日本の産業、経済、社会を5年で蘇らせることを目指すものです。

そのためには、国、自治体、民間等の日本の総力を挙げた復興活動が不可欠であります。一日も早い居住環境、生産基盤の復旧を、急がねばなりません。

そしてこの復興が目指すべきヴィジョンは、「ふるさとの再生」であります。東日本は、我が国日本のふるさとの象徴であります。だからこそ、日本の永続的な繁栄を企図する以上、この「ふるさと」は、絶対に取り戻さなければならないのであります。

さて、この「ふるさとの再生」にあたっては、「直接的な救済」はもちろんのこと、「就労支援型の救済」を行うことが重要であると考えます。

つまり、例えば食料や物資を直接援助する、という形の救済に加えて、救済のための事業を興し、雇用を創出し、その雇用の機会を、被災者の方々に提供申し上げるわけであります。

これによって力強い、ふるさとの再生を目指すのであります。

そして、そうした雇用の機会を創出する一つの仕組みとして、「東日本ふるさと再生機構」の設立、これを提案いたしたいと思います。

例えば、この機構を、東日本の復活までの時限付きのものとして、国が主体的に出資する法人として、様々な復興事業を推進していくわけであります。

なお、こうして創出された、例えば、数万規模の雇用機会を、被災者の方々に加えて、ふるさと再生を願う、全国の若者達をはじめとした皆様に提供することも考えられます。


~~財源論~~

さて、国や自治体、あるいは、上記のような機構が行う諸事業のためには、総額で、何十兆円という予算が必要となります。

しかし、今の日本には、そんなオカネはない、とお考えの方もおられるかもしれません。

しかしそれは、既に菊池先生がお話になったように、完全なる「事実誤認」であります。

菊池先生がおっしゃった通り、デフレ下にある我が国では、資金需要が冷え込んでおり、銀行では、皆さんの預貯金の内、150兆円以上ものオカネについて貸し付ける相手が民間に見あたらず、その結果、国債しか運用方法がない、というような状況になってしまっているのであります。

そのせいもあり、長期金利は低くなっております。しかも、我が国の国債は「自国通貨建て」で、かつ、「9割以上が内債」という事実を踏まえますと、いわゆる「破綻」という状況からは、完全に、程遠い状況にあるというのが我が国の実態なのです。

言い換えますなら、我が国は、今「国債による財源調達」が完全に、可能な状況にあるわけです。

ただし、国債発行によって、少なくとも一時的に、金利が上昇するリスクがあることは否定できません。しかし、そうしたリスクは、日本銀行との協調すなわちアコードを行うことで、回避可能であります。

つまり、国債発行と共に、日銀が国債を市中から買い取るオペレーション、積極的な金融政策を同時並行で行うことが望ましいわけであります。

なおその際には、適正なインフレ水準に収まるように、各種の金融政策等によって適宜、裁量的に調整していくことが必要となる点も、申し添えておきたいと思います。

その他、子ども手当等の所得移転のための財源を、被災地に移転する方法や、被災地への所得移転を促進するための、寄付金税額控除や被災地特別減税等も考えられます。



~~TPP~~

さて、こうした復興活動を進める一方で、どうしても避けねばならない事が1つあります。

それは過激な自由貿易の推進するTPPであります。

そもそもTPPは、デフレ下で余っている「過剰な供給分」を、海外への輸出に振り向けようとするものでした。

しかし、大震災の今、国内の「過剰な供給分」を振り向ける対象は、海外ではなく、「被災地」であることは明白であります。

さらに、東北地方は日本の食糧供給 地帯であり、今回のTPP加入によって、さらに壊滅的なダメージを受けることもまた、明白であります。

したがって、この被災地に、「TPP参加による諸外国からの安い農産品」という第二の津波が襲来すれば、ふるさとの再生どころか、ますます壊滅的な被害を被ることは必定なのであります。

そもそも、せっかく農地を復旧しようとしても、「TPPによってどうせ将来、使えなくなるんだ」という気分が支配的になれば、復興に向けた士気が、ガタ落ちになることは、これはまた明白であります。

だからこそ、被災した農業地帯が「復興」に専心できるように、「TPP交渉不参加の 決定の 明言」が、是が非でも必要とされているのであります。

こうした理由から、政府が東日本の復興を目指すと言うのなら、それとは逆方向のTPP参加は、絶対に避けなければならないのであります。


~~列島強靭化10年計画~~

さて、以上の東日本復活5年計画と平行して、日本の永続的な繁栄を期する「列島強靭化10年計画」を強力に推進することを提案いたします。

もちろん、初期数年間は東日本復活に注力する必要がありますが、その復活の程度に応じて生ずる余力を結集し、日本全体の強靭化を図るわけであります。

まずは、100兆円前後もの被害をもたらすと言われている首都直下型、東海・南海・東南海地震への対応が、急務であります。

それと同時に、最悪で70兆円もの被害が懸念されている首都を直撃する大洪水への対策も不可欠です。

例えば、現在中止されている八ッ場ダムをはじめとしたダム事業や、スーパー堤防事業が、「洪水対策」としても重要な意味を持つことは、工学的に、明白であります。

しかも、各地域のダムによる水力発電は、これからの「電力計画」の観点からも、重要なものとなるでしょう。

なお、原子力政策の見直しは、今回の事故の結果を科学的に分析した上で、冷静に議論されるべきであることは、一言、申し添えさせていただきたいと思います。

さらには、物流網、エネルギー・電力系統網については、平常時において過剰に効率化することを差し控え、過剰に効率化することを差し控え、まさかの被災時を想定した、二重化 等が必要となるでしょう。

例えば、東海側の大地震を想定した、日本海側の交通インフラの強化などが、必要とされるわけであります。なお、そうしたインフラが日本海側の、平時の発展に資するものであることは、言うまでもありません。

この様な、インフラシステムの強靭化に加えて、産業構造そのものの「強靭化」も不可欠であります。

まさかの被災時に、どのようにして事業を続けていくのかという計画、いわゆる、BCPの策定が、企業、自治体、国といったあらゆるレベルで必要とされています。ついては、BCP策定の義務化も視野に納めた立法的議論が必要と考えられます。

さらに、エネルギーや食料といった基本的な物資については、「まさか」の時を平時から想定し、可能な限り自給率を高めると共に、備蓄量を一定確保することも必要でしょう。



~~「コンクリートから人」~~

最後に、当方からの公述を終えるにあたり、どうしても申しあげなければならないことがございます。

今回の予算の中でも、かつての選挙でマニフェストに掲げられていた「コンクリートから人」への方針は、踏襲され、公共事業が大きく削られたままであり、かつさらに公共事業費が削られようとしています。

もちろん、この度の地震・津波は、例えば日本一とも言われた堤防ですら、軽々と乗り越える程の巨大な破壊力を持ったものでした。

しかし、ほとんど報道されておりませんが、「堤防によって津波から守られた街」があった事も、事実なのであります。

さらには、公共事業関係費によって進められた「リスクコミュニケーション」という取り組みの中で、「津波から逃げるべきだ」、ということを人々に地道に伝え続けた事で、あの津波から逃げることができ、助かった人々がおられたことも、事実であります。

したがいまして、「コンクリートから人へ」といった、公共事業を削減する方針がなければ亡くならずに済んだ方々が、多数おられたであろうことは間違いないのであります。

それを思いますと、かえってお亡くなりになる「人の数」が増えしてしまうような、「コンクリートから人へ」なるスローガンに基づくような予算編成などは、断じて許すことができないのであります。

さらに言いますなら、そのような、実際には破滅的であるものの、一定の集票効果が見込めるような 軽薄で 耳あたりがよい甘い「スローガン」を、「国民の生命と財産をまもるべき政治に直接・間接に関わる人々」には、もう二度と、口になさらないでいただきたいと、強く、祈念せずにはおれません。

今国会で議論されております予算案におきましても、是非とも、その点、最大限のご配慮を賜りますよう、一専門家として、声を大にして、申し上げたいと思います。



~~政治決断を~~

いずれにしても、東日本、そして、日本そのものの復活は、冷静に考えれば考えるほどに、十二分に可能であることが見えてまいります。

そのための財源は、我が国の中に、確かにあるのです。
そして、技術立国日本には、その技術力も、十二分にあるのです。

それを思えば、東日本、そして、日本の復活のために今、足らないものは、政治決断だけなのであります。

すなわち東日本を復活させんとする政治決断なのであり、日本を強靭な国にせんとする政治的決断こそが今強く求められているのであります。

是非とも、東日本が復活し、日本が度重なる巨大震災を含めた様々な国難をも乗り越え得る強靱な国になるための政治決断を下されんことを、改めて、お願い申し上げまして、わたくしの公述を終えたいと思います。

ありがとうございました。


出典:藤井研究室
http://trans.kuciv.kyoto-u.ac.jp/tba/index.php/b4/job/121-sanngiin.html


【藤井聡】「人」が死ぬことを防ぐ「コンクリート」は不要なのか

「人」が死ぬことを防ぐ「コンクリート」は不要なのか


京都大学 藤井聡教授


 東北太平洋沿岸地震の甚大なる被害は、多くの人々にとって、想像を絶するものであるに違いありません。
しかし、少なくとも「政府」にとっては、それは想像することが不可能なものなのでは、決してなかったはずなのです

────例えば、昨年の拙著から、引用させていただきます。
────東北地域においては、三陸沖北部地震、宮城県沖地震がそれぞれ予想されている。ここに、三陸沖北部地震の30年以内の発生確率は90%、そして、宮城県沖地震に至っては99%発生することが予想されているのである。(中略)こうした背景から、我が国政府は、中央防災会議の議論を受けて、ここ何年もかけて、様々な対策の準備を進めてきた。

 具体的には、建築基準法における「耐震基準」が改定され、かつてよりより地震に強い建物しか建てられないようになっている。しかし、これでは「新しい建物」が地震に強いだけで、それ以外の膨大な数に上る既存の建物は、地震がくれば、やはり壊れてしまう危険性が高いまま放置されることとなる。

 したがって、既に建てられている建物を、とりわけ、少しずつ耐震強化していくことが必要なのである。そして政府は「地震防災戦略」をつくり、全国の建物の耐震化の促進を図ろうとしている。そして、そのために上に述べたような20兆円にも上る予算の多くが必要とされるのである。

 ここで、耐震強化を行うべき建物は、もちろん住宅や商業施設も含まれるが、たくさんの人々が利用する重要な建物から緊急に対策を進めていくことが必要である。そして、そうした重要な建物としては、例えば、将来の日本を担う子ども達が通う「小中学校」が考えられるであろうし、たくさんの人々が利用する「運輸・交通施設」も考えられる。

 しかし、残念ながら、こうした施設に対する耐震対策は、現在、大きな遅れをとっている。

 例えば、前者の小中学校については、その耐震強化に、平成21年度には約2800億円の補正予算が予定されていた。そしてその予算で、全国の小中学校の、約5000棟の耐震化工事を行うことが計画されていた。しかし、政府のいわゆる「事業仕分け」によって、その予算が3分の1程度の1000億円にまで削減されてしまった。このために、耐震化が遅れる小中学校の建物が、2800棟程度に上るのではないかとも言われている。

 また、都市を支える運輸施設である都市高速道路についても、平成21年度の補正予算で、首都高速道路、阪神高速道路を対象として1211億円をかけて耐震化することが予定されていたのでだが、同じく民主党政権成立直後に、とりやめとなってしまった。

 いうまでもなく、こうした民主党政権の判断は、「コンクリートから人へ」の考え方を踏まえてのものである。

 しかし、皮肉にも「コンクリートから人へ」の転換によって、ほぼ間違いなくいつかどこかで生ずるであろう巨大地震によって失われる「人」の命の数を、増加させてしまうことは避けられない。

 そもそもこの現代文明社会の中では、「人」は「コンクリート」の中で「コンクリート」に守られつつ暮らしている。

 この現実を忘れて、地震防災などできるはずもない。「コンクリート」を適切に強化することを通じて、はじめて我々は、弱々しい存在ながらも、巨大地震という自然の猛威に対して立ち向かう術を得ることができるのである。

 事実、我々はその危機に立ち向かうための「技術」を持っている。阪神淡路大震災以降、耐震のための土木技術、建築技術は大きく進歩している。そして、我が国は経済不況の現時点においてもまだ、他国には真似できないほどの大きな「財政力」を持っている。

 今足らないのは、そうした「技術」や「財政力」をもってして、強力に耐震強化を図ろうとする「政治判断」だけなのである。

 言うまでもなく、地震が起こってから後悔しても、もう遅い。

     ~『公共事業が日本を救う』(平成22 年10 月)
     第八章・「人」が死ぬことを防ぐ「コンクリート」は不要なのか~ より

『地震が起こってから後悔しても、もう遅い。』────悔やんでも悔やみきれません。


あるいは、先月寄稿した新聞原稿から、もう一つ、引用させていただきます。

 地震や台風のメカニズムを誰も知らず,その対策も明らかでなかった中世ならいざ知らず,その予測も対策も十二分に明らかにされている現代で,こうした危機に無策でいる
こと程に「巨大なる不作為の罪」は無い.そもそもそれは(・・中略・・)日本国家の繁栄,ひいてはその存亡をも根底から脅かす程に巨大な「国家的危機」なのである.

 この国家的危機を見据えるなら,「コンクリートから人へ」なる耳あたりの良いスローガンを繰り返しつつ票集めに勤しんでいる暇など,微塵も無いはずだったのだ.道路,鉄道,堤防,港湾,そして学校等の各種建物の耐震性の向上や,各種の治水事業,そして首都移転も見据えた防災力向上を期した諸事業への大規模な公共投資を毅然と行い得る政府が,一日も早く我が国に誕生することを,心から祈念したい.
     『巨大地震と大洪水による「リアルな国家危機」に備えよ』 より
     (自由民主:平成23年2月25日)



 この最悪の巨大地震に対して、「コンクリートから人へ」と叫びつつ政権を奪取した政党の人たちが今、災害対策本部を設置しています。
私たちは、彼らが「巨大なる無作為の罪」をおかしてしまった人たちであることを、絶対に、忘れてはいけません。

 しかしそれと同時に、私たちが、そういう人たちを、私たちの国の政権政党として選択してしまったのだという事実もまた、絶対に忘れてはいけません。

 例えば、残念ながらこの巨大地震と同規模のM9にも及び、かつ、原発施設を含めた多様な施設が設置されている太平洋ベルトを襲うと言われている「東海・南海・東南海地震」が、30年以内に起こる確率が50%~87%にも上るという事が、知られています。

 私たち国民は決して、こうした事実から目を背けてはなりません。そしてそれと共に、その事実から目を背けない人たちを見極め、我が国の命運を左右する政権の座に着く人々として、選択していかなければなりません。

 私たち日本人が、そうした未来に向かって確実に進んでいくことができるのか否か───、それは今、目の前で、あるいは、テレビを通して私たちの目前で起こっている東北太平洋沿岸地震の現実の一つ一つの意味を、きちんと受け止めることができるのか否かにかかっているに違いありません。

 そのためにも、わたしたちの身の上に、あるいは、わたしたちの同胞達の身の上に起こっている現実の一つ一つを、しっかりと、眼に焼き付けていきたいと思います。


出典:藤井研究室
http://trans.kuciv.kyoto-u.ac.jp/tba/images/stories/PDF/Fujii/201101-201106/editorial/touhoku.pdf


【藤井聡】TPPが建設産業の「崩壊」を導く

TPPが建設産業の「崩壊」を導く


京都大学 藤井聡教授


 ここ最近、“TPP”(環太平洋戦略的経済連携協定)という言葉が世間をにぎわしている。世間では「TPPは米国を含む諸外国との関税を撤廃する貿易協定で、それによって国内の農業が打撃を受ける一方、家電製品や自動車などの日本の「輸出産業」は伸びると期待される―――」等といった論調が多いようだ。そうした認識は、建設業界内部でもほぼ同様で、「これまで、外国企業はそれ程入ってこなかったし、心配は無用だろう。むしろ、大手ゼネコンが海外に出やすくなるのだからいいのではないか」という“楽観論”が語られる事もしばしばである。

 しかし、そうした“楽観論”は、現状に対する甚だしい“認識不足”に基づくものでしかない。

 そもそも、TPPを日本に持ちかけてきた米国は、オバマ大統領自身が一般教書演説でも強調している様に、リーマンショック後の国内の不況改善を図るべく、(ドル安戦略による)徹底的な輸出拡大を図ろうとしている。それ故、TPPによって「日本への輸入」が増える要素はあったとしても、「日本からの輸出」が伸びる事はほとんど期待できない。

 しかも、メディア等ではほとんど指摘されていないが、TPPは単なる関税撤廃だけではなく、習慣や規制等の様々な「外国企業の参入障壁の撤廃」を求める協定だ。この点を踏まえれば、「建設業界」に深刻な影響が及ぶ危険性が明確に浮かび上がる。

 第一に、TPPに加入すれば「国際入札」のための最低金額が大幅に引き下げられることが予期される。例えば地方の建設コンサルティングの最低金額は現状で2億円強だが、これが1千万円を切る水準になる可能性がある。こうなれば外国企業参入の危険性が広がると同時に、発注のための行政コストが肥大化する。その結果、公共事業の発注総量が、単なる行政コストの問題で大幅に限定されてしまうという理不尽な帰結が危惧される。

 第二に、日本国内の建設事業の水準は「一級土木施工管理技士が必要」「現場代理人の常駐が必要」といったルールによって確保されてきた。しかしTPPによってこれらの「外国企業参入に都合の悪いルール」が撤廃される可能性がある。そうなれば、外国企業の参入如何に関わらず、国内の建設事業全体の品質が大幅に低下する等、建設産業全体が大きな混乱に見舞われる可能性がある。

 第三に日本では建設事業の政府発注の“ロットサイズ”は慣習的に小さく、これを前提として大小様々な業者が併存する形で建設業界が発展してきた。ところがTPP加入後には、海外企業が容易に参入できるようにするために、“国際標準”に合わせるべくロットサイズを大きく「引き上げる」可能性がある。そうなれば外国企業の流入は一気に現実味を帯び、筆者の試算では、最悪で5000億円~1兆円規模で外国企業が国内の建設事業を受注していくリスクすら現実的にあり得ることとなる。そんなリスクが現実となれば、現状の建設デフレが回復不能な程に深刻化し、凄まじいリストラや倒産の嵐が全国の建設業界を覆う事となるのは間違いない。

 しかもこうした理不尽な諸帰結を回避するためには、諸外国との地道な交渉が不可欠であるが、そもそも建設産業は「農業」と同様に「輸出産業」ではない。したがって我が国政府は、「輸出産業」の交易を有利に進めるための「カード」の一枚として、国内の建設市場に対する諸外国の要求を「飲んでいく」ことすら危惧される。つまり、政府は輸出産業
を優遇するために、建設産業を守るどころか「切り捨て対象」とする危惧さえ現実的に想定されるのである。

 つまり、現在の状況を冷静に分析すればする程に、「TPP への加入という“平成の開国”によって日本を発展させる」という発想が「世間知らずの青二才の夢物語」程度の代物にしか過ぎないという危惧が明白となるのだ。

 そうである以上、日本の建設業界を守ることのみならず、日本経済のこれ以上の凋落を防ぐためにも、我々はTPP に対して最大限の警戒心でもって臨み、慎重なる否定的姿勢を明確化にしていくことが、冷静で合理的な判断だと言わざるを得ないのである。

日刊建設工業新聞(緊急提言)平成23年3月3日号
http://trans.kuciv.kyoto-u.ac.jp/tba/images/stories/PDF/Fujii/201101-201106/editorial/fujii_tpp.pdf


【藤井聡】「公共事業の縮小路線」に決別を

「公共事業の縮小路線」に決別を


京都大学大学院教授  藤井 聡


デフレ不況からの脱却を阻む「コンクリートから人へ」路線

 「コンクリートから人へ」では国が亡ほろびる。

 「コンクリートから人へ」を進める限り、「コンクリート」でつくられたインフラの老朽化問題が放置され、日本の文明が根底から「廃墟化」してしまうことは避けられない。

 「コンクリートから人へ」を進め、コンクリートでできた道路や橋、学校などの「耐震化」を怠れば、将来「確実」に起こると言われている首都・東京や日本の太平洋ベルト地帯を直撃する巨大地震によって日本国家は致命的な被害に遭うことは間違いない。

 「コンクリートから人へ」を推し進め、効果的な財政出動が控えられ続ける限り、日本は深刻なデフレ不況から抜け出すことができない(図を参照されたい) 。




 その結果、わが国は数千兆円ひいては1京円という想像を絶する経済損失を被ることになる。

 そして何より「コンクリートから人へ」は、インフラ投資という将来の国民のためのおカネを、社会保障費とい
う形で現在に生きる自分たちのためだけに使う、という方針だ。

 それはさながら「子供を顧みない享楽的な親」のように、現世代による将来世代に対する「裏切り行為」に他ならない。

 そんな「享楽的な親」の子供は貧困にあえぐか野垂れ死にするかしかない。

 つまり「コンクリートから人へ」なる財政方針を続ける限り、日本が「亡国」への道へと進んでしまうことは避けられないのである。だからこそ、日本をその亡国の危機の淵ふちから救い出すことを企図するなら、「コンクリートから人へ」を叫ぶような政権は、絶対に打倒せねばならぬのである。

 しかし、そのときに忘れてならないのは、現在の民主党政権は、自由民主党の橋本政権に端を発し、小泉政権で徹底的に推進された「公共事業縮小路線」に「コンクリートから人へ」なる分かりやすいスローガンを付与したに過ぎない、という点だ。

 つまり、今の民主党の「コンクリートから人へ」なるスローガンは、かつての自由民主党政策の「残像」なのである。ただ、彼らはその路線を凄すさまじく過激に推進したために「公共事業縮小路線の根本的な誤り」が、誰の目にも明らかな形で浮かび上がることとなったのである。

 この点にこそ、自由民主党が「野党」に下った歴史的意義の一つを見いだすことができるのではなかろうか。

政策転換の「絶好の好機」

 「コンクリートから人へ」なるスローガンを叫びつつ政権の座につき、それを推進せんとした民主党政権を打倒することを通じて、さながら自らの内にある「膿」を絞り出すかのごとくに、日本を亡国の危機の淵にまで追いやる「公共事業縮小路線」と決別する―――こうした政策上の大転換を図る「絶好の好機」を、自由民主党は「下野」したからこそ得ることができたといえるのではなかろうか。

 無論、そうした評価は、後世の政治史家にゆだねるべきものではある。しかし、近い将来に政権を奪取した暁に再び「公共事業縮小路線」を踏襲し続けるのか否かは、われわれ現代人の選択に他ならない。

 だからこそ、われわれは如い何かなる意味において「公共事業縮小路線が国を亡ぼす」のかを冷静に理解しつつ、なすべき公共事業のかたちを真摯しに考え続けなければならないのだ。

 そもそも、公共事業とは公共のための事業だ。そして政治というものが「公共のため」のものである以上、公共事業は自ずと政治の営みの中心に据えられるべきものだ。事実、何千年もの世界史と日本史に登場する全ての政治家は、治山や治水といった公共事業を政まつりごとの中心に据え続けてきたではないか。

 そうである以上、それをただ「闇雲」に削減するような「コンクリートから人へ」路線は、「狂気の沙汰」以外の何ものでもなかったのである。

 図らずも野党に下ったこの「危機」を、絶好の「好機」と捉える精神の力量を遺憾なく発揮し、日本を救うための諸事業を力強く進めんとする政権を築き上げられんことを強く祈念しつつ、本連載を終えることとしたい。

自由民主 2011年3月1日号

出典:藤井研究室
http://trans.kuciv.kyoto-u.ac.jp/tba/images/stories/PDF/Fujii/201101-201106/editorial/fujii_2453_8.pdf


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