スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

【藤井聡】鉄道が都市を活性化する

鉄道が都市を活性化する


京都大学大学院教授 藤井聡


「幹線」鉄道は、都市活性化の切り札

 鉄道が「街の発展」にとって甚大なるちからを持っていることは、改めてここで指摘するまでもないことだろうと思う。
 そもそも街というものは、ヒトとヒトとが交流することで様々な価値を生み出す場である。産業にしても、経済にしても、研究・開発にしても、各種の社会活動にしても、はたまた文化にしても、いずれも、「ヒトとヒトとの交流」が全ての源だ。どれだけインターネットや情報通信技術が普及しようとも、それがヒトとヒトとの直接交流に代替できる様になることなど、当面ありそうにない。
 だからこそ、「街の活力」なるものは、直接的に、ヒトとヒトとの交流の機会の大きさや密度に依存している。交流ある街は活力を生むのであり、交流無き街は早晩衰退して行かざるを得ない。
 そんな「ヒトとヒトとの交流」を爆発的に拡大したのが、「鉄道」の発明であった。
 鉄道技術があったればこそ、数十キロ、数百キロ離れた人々を一気に一箇所に、効率的に、短時間の内に集めることが可能となったのである。

 一方で、そんな風にして大量の人々を一箇所に効率的に集めることは、「公共交通手段」とは対極的な存在である自転車やバイク、自動車等の様な「私的交通手段」(つまり、プライヴェート・モード)では不可能だ。大量の人々がそんな私的な手段で集まった瞬間に、その場所には「大渋滞」が生ずることは避けられないからだ。
 無論、最も原始的な私的交通手段である「徒歩」では、そんな大渋滞は生じない。しかし、言うまでもなくその速度の限界故に、効率的に、大量の人々を集めてくることはできない。
 かくして、「街」ひいては「都市」の活力を維持し、支え続けるためには、大量の人々を迅速に輸送可能な「公共交通手段」が、どうしても必要とされるのである。だから、街の活性化のためには、大規模な広域公共交通投資が是が非でも不可欠なのである。逆に、そうした投資がなされなければ、街は衰退して行かざるを得ないのである。

 何とも当たり前に過ぎる様な話であるが、鉄道と都市の関係を考える上では、この一点が全ての議論の基本になるのだ。我々はこのことを、肝に銘じておかねばならない。


「新幹線」が整備された街は栄え、整備されなかった街は衰退した

 何とも当たり前に過ぎる話しであるが、鉄道と都市の関係を考える上では、この一点が全ての議論の基本になるのだ。
 例えば、図1をご覧いただきたい。
この図は、明治9年時点での、人口が多い都市の1位から15位までの都市(つまり、人口ベスト15都市)を示している。



 ご覧の様に、現在でも、大都市であり続けている東京や大阪、名古屋といった都市もある一方で、現在では、必ずしも「大都市」と言われなくなったかつての大都市も、数多くあることが分かる。
 実際、図2は、現在の大都市を示している地図である。



 この地図は、東京、ならびに、政令指定都市を示したものであるが、和歌山、徳島、富山、金沢、熊本、鹿児島、函館の7都市が、明治期には人口ベスト15都市であったにも関わらず、現代では、「大都市」の象徴である「政令指定」を受けられなくなってしまっている。いわばこれらの都市は、この近代の歴史の中で、残念ながら(少なくとも相対的には)「衰退」してしまったのである。

 その一方で、明治期には「人口ベスト15都市」には含まれていなかった千葉,相模原,川崎,静岡,浜松,新潟,堺,岡山,北九州,福岡,札幌といった街々は、いずれも、政令指定都市となっている。いわば、これらの街は、明治から平成にかけて、この近代の歴史の中で、大いに「発展」したのである。

 では、近代日本における都市の「発展」と「衰退」を分けたものは一体何であったのだろう?
 もちろん、その理由には、様々なものが考えられるし、それぞれの都市にそれぞれの事情があることは間違いない。
 しかし図3は、そうした都市の「発展」と「衰退」を分けた重要な「要因」が存在していることを、明確に示している。
この図3は、現代において政令指定都市となっている都市と、明治期から衰退した都市、ならびに、(平成22年時点の)新幹線の路線網を示したものである。



 ご覧のように、「明治期において人口ベスト15位に入っていたにも関わらず、現在、政令指定都市ではなくなった都市」、すなわち、和歌山、徳島、富山、金沢、熊本、鹿児島、函館の「明治期から衰退した7つの都市」には「いずれも」、新幹線が通っていない
..........
という事が分かる。

 その一方で、「明治期において人口ベスト15位に入っていなかったも関わらず、現在、政令指定都市となった都市」である千葉,相模原,川崎,静岡,浜松,新潟,堺,岡山,北九州,福岡,札幌といった「明治期から発展した都市」は(札幌という唯一の例外を除いて)いずれも、「新幹線が通る都市圏に位置している
................
」という事が分かる。
 つまり、「新幹線の整備投資が行われた都市は『発展』し、新幹線の整備投資が行われなかった都市は大なる可能性で『衰退』していった」、というのが、日本の近代の歴史だったのである。
 すなわち都市の盛衰を分けたのは、新幹線整備だったのである。

 その象徴的な都市が、「新潟」だ。新潟は、明治期においては、人口ベスト15都市に含まれてはいなかった。当時は日本海側の大都市といえば、図1からも分かる通り、富山であり金沢だった。しかし、富山や金沢は、新幹線が整備されなかったために、徐々に衰退していき、今では政令指定されるまでの規模は無くなってしまった。
 一方で、新潟は新幹線が整備され、徐々に発展を遂げ、今では、本州の日本海側で「唯一」の政令指定都市と
なったのだ。

 ところで、新幹線整備は戦後急速に進められたものであり、都市の盛衰の全てを「新幹線」の整備の有無に帰する事は難しいであろう。しかしそれでもなお、いち早く鉄道路線が整備され、いち早く複線化が進められていったのは間違いなく新幹線の整備区間なのである点を踏まえるなら、我が国日本には、「幹線公共交通整備による都市の盛衰の法則」とでも言うべき法則が存在しているのだと考えることはできるだろう。
 この「幹線公共交通」に大容量の航空路線も含めるなら、新幹線が無い都市圏であるにも関わらず政令指定都市になり果せることができた「札幌」もまた、この「法則」によって説明することができるだろう。なぜなら札幌は、世界一の人口を抱えた大都市東京都、世界一の旅客者数を誇る航空路線で結びつけられた都市だからだ。

 いずれにしても、明治以降の都市の盛衰と、「新幹線」を代表とする幹線公共交通の整備との関係を見れば、幹線公共交通の整備が、都市の発展にとって如何に重要であるかを、改めて認識することができる。
 すなわち、冒頭で、「『街』ひいては『都市』の活力を維持し、支え続けるためには、大量の人々を迅速に輸送可能な『公共交通手段』が、どうしても必要とされるのである。だから、街の活性化のためには、大規模な広域公共交通投資が是が非でも不可欠なのである。逆に、そうした投資がなされなければ、街は衰退して行かざるを得ないのである」という仮説的主張を行ったが、この主張の妥当性は、近代日本の都市の盛衰の経緯からも、明らかだということができるのである。


日本の各都市の発展のために幹線公共交通整備を

 いずれにしても、こうした「幹線公共交通整備による都市の盛衰の法則」を踏まえるなら、地方都市の活性化において、如何に新幹線の整備が必要なのかが、お分かり頂けたのではないかと思う。
 だからこそ、本年開通した熊本や鹿児島、青森、そして、比較的最近新幹線が開通した八戸といった諸都市は、これから、大きく飛躍していく契機を得たということができるだろう。
 そして、それを見据えるなら、富山や金沢への新幹線への開通は、北陸地方の発展のためには、急務だと言うことができるだろう。
 ただし、新幹線の開通が都市の発展にとっては、「その都市が他の様々な大都市と繋がる」という条件が不可欠だ。そうした「繋がり」によって、より多くの人々がその地に集うことが可能となり、都市が発展していく可能性が広がるからだ。
 それは、東京、名古屋、大阪と連なる新幹線沿線沿いに「現代の政令指定都市」が、軒並み連なっている様子からも一目瞭然だ。
 その点を踏まえるなら、富山や金沢の発展にとって、京都や大阪まで北陸新幹線が延伸されることは、絶対的に必要な条件だ。それは言うまでもなく、京都・大阪といった関西圏の発展にとっても重要な意味を担うこととなろう。
 その他、青森から函館までの新幹線の延伸、さらには、札幌や旭川までの延伸は、日本北部の大きな交流圏を形成することともなろう。

 四国については岡山から瀬戸大橋をわたり、少なくとも高松へと至る路線を、山陽新幹線と相互直通運行で新幹線を整備することが、四国の発展に大きく寄与することは間違いない。
 そして鹿児島まで新幹線が開通した九州においても、まずは大分あたりまで新幹線を整備するということは、決して都市間流動の点から考えても決して不可能な話しではなかろう。
 山陰線や羽越線については、少なくとも現時点においては新幹線を整備する程の流動が確保できるか否かについては微妙なところかも知れないが、少なくとも複線化を急ぐという形の幹線公共交通整備への投資が考えられるだろう。

 その一方で、新潟と北陸新幹線の間、ならびに、岡山と鳥取との間(伯備線)は、潜在的な旅客数の観点から、新幹線化することは、現時点においても決して非現実的なものではなかろう。

 以上に述べた幹線公共交通整備は、以上に述べたもの全てを行ったとしても、恐らくは、既にその整備が具体的に検討されはじめている東京大阪間の中央新幹線のために必要な投資額を遙かに下回る程度の金額(例えば、5-6兆円程度)で対応可能なものであろう。
 しかも、そうした限定的な投資額であるにもかかわらず、そんな投資は、これまでの近代日本史に於いて先行的に投資され続けてきた太平洋ベルト地帯の諸都市以外..に立地する各都市、すなわち、これまでの近代日本史において十分な投資がなされてこなかった日本海側をはじめとした、日本の諸地域における各都市の飛躍的発展に、大いに資する事となろう。
 それは結果的に、いわゆる「分散型国土」を形成することとなるであろう。そしてそんな分散型国土の形成は、今、日本国家にとっての喫緊の課題である「平成・関東大震災」や(東海・南海・東南海地震による)「西日本大震災」に対する「強靱さ」(レジリエンス:すなわち、致命傷を避け、被害を最小化し、迅速な回復を期する性質)を確保する上で、最も効果的なアプローチでもあるだろう。
 それを思えば、近い未来に確実に訪れるであろう「超巨大震災の連発」に備えるためにも、上記のような幹線公共交通整備を通した各地方都市の発展は、例えば大規模な建設国債の発行による財源調達を図りつつ、今すぐに始めるべき、重大な国家的課題なのである。

続きを読む
スポンサーサイト
(ご覧いただき、ありがとうございます!)
藤井聡教授イベント


講演「山陰新幹線の早期実現と北陸新幹線」
平成28年7月30日鳥取
 


関西ローカルの夕方の報道番組
夕方LIVEワンダー
(午後3時50分~午後7時)
毎週金曜日コメンテーターにて登壇予定 


藤井聡教授書籍
「プライマリー・バランス亡国論」
その7つの理由


「プライマリー・バランス亡国論」
三橋貴明氏の紹介文


発売日2016年5月

国土学
書評

発売日2015年10月

デモクラシーの毒
中野剛志書評

発売日2015年7月

モビリティをマネジメントする
参考



超インフラ論

発売日2015年04月

<凡庸>という悪魔
書評①
書評②
書評③

発売日2014年07月

築土構木の思想
参考動画


発売日2014年06月

グローバリズムが世界を滅ぼす

発売日2014年05月


政(まつりごと)の哲学
「はじめに」より

発売日2014年01月

大衆社会の処方箋
柴山桂太氏書評
参考動画
参考記事
参考記事

発売日2013年12月

巨大地震Xデー
あとがき


発売日2013年08月

新幹線とナショナリズム
参考記事
はじめに&目次

発売日2013年06月

強靭化の思想
強い国日本を目指して
正論インタビュー
参考記事
簡単な紹介
参考記事

発売日2013年06月

レジリエンス・ジャパン
日本強靭化構想

読者レビュー


発売日2013年06月

経済レジリエンス宣言
はしがき


維新・改革の正体
-日本をダメにした真犯人を捜せ-

中野剛志氏書評
参考記事


日本破滅論
~おわりに~


コンプライアンスが日本を潰す
新自由主義との攻防

“はじめに”と“おわりに”
読者からレビュー


プラグマティズムの作法
日本が救われる有効シナリオ
トークイベント動画
中野剛志氏推薦文


救国のレジリエンス
動画「救国のレジリエンスとは何か?」
富国強靭


列島強靭化論
佐伯啓思氏書評


公共事業が日本を救う
中野剛志氏書評
今こそ、公共事業で巨大地震に立ち向かうべし
著者が語る
山梨のトンネル崩落事故
デフレの今こそ大規模な公共事業を


正々堂々と
「公共事業の雇用創出効果」を論ぜよ 
~人のためにこそコンクリートを~

西部邁氏寄稿『藤井君の思慮ある勇気』



なぜ正直者は得をするのか
参考記事


文明の宿命

参考記事


土木計画学
参考記事


社会的ジレンマの処方箋


代表的日本人
内村鑑三著

藤井聡教授の愛読書

バック

こんにちは(*^^*)


上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。