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【藤井聡】青木泰樹氏「事実は固定観念を打ち砕いた」

-藤井聡教授FBよりシェア-

青木先生の、大変興味深い論説です。

文字通り、「国民を豊かにする」という当たり前の目的のための経済論を展開しておられる、日本では数少ないプラグマティックな経済学者の先生と、改めて感じ入る次第です

曰く。。。

「私としては、経常収支赤字の善悪を論ずる前に、その原因たる貿易赤字の問題解決に注力すべきだと考えております。 貿易赤字の解決が経常赤字の懸念を払拭するのです。 国民の大多数にとって重要なのは暮らし向きですから、経済成長を阻害する要因を除去するのが先決だと思います。」

「財務省の「貿易統計」から貿易収支の内訳を見ますと、二つの特徴的な変化が見て取れます。 13年における電気機器の輸出の黒字額が、07年のピーク時より6兆円も減り1.7兆円になっていること。 同様に鉱物性燃料の輸入の赤字額が09年と比べて13兆円増え26兆円弱になっていることです。 構造変化によって、貿易収支に実に20兆円の赤字圧力が加わっていたのです。

明らかに、われわれの予想を超えて産業の空洞化は進行していたのです。たった数年で日本は家電製品や情報端末に関して完成品の輸入国へと転じつつあるのです。 部品を輸出し、完成品を輸入する。どちらの価格が高いかは言うまでもない。また、良識ある論者が指摘するように、原発停止によるLNG輸入額の急増がボディーブローのように日本経済の体力を奪っているのです。」

「解決策は明白です。空洞化を止めるためには、海外進出企業が国内回帰した場合の優遇策を提示することです。」

いずれも素晴らしい状況分析とご主張です。

日本経済にご関心の方は、是非、ご一読下さい!


【青木泰樹】事実は固定観念を打ち砕いた

固定観念なり通念から逃れることは、誰にとっても難しいものです。
「経済通念に囚われてはならない」と常々主張している私もまた例外ではありません。

十年一日の如く運行する経済状態、いわば慣行の軌道上を社会が進んでいる限り、通念に依拠することは「思考の節約」であり、「世間的にも孤立しない」という利点があります。
しかし、見方を変えれば、それは「思考の停止状態」でもあり、また「事なかれ主義」ともいえるのです。
それゆえ、次々に新たな事態が生ずる、明らかに過去の考え方や手法が通じない変動期にあっては、通念の虜になってはならないのです。
現代は、まさにそうした時代ではないでしょうか。

アベノミクスの「第一の矢」の効果で円安傾向が定着した時期、Jカーブ効果によるタイムラグはあるにせよ、誰もが貿易収支は改善すると考えていたはずです。
ご多分に漏れず、私も同様でした。円安になれば輸出が増え、輸入が減ると。それは経済学の初歩の知識ですから。

しかし、現実は通念を裏切りました。事実は固定観念を打ち砕いたのです。

円安による貿易赤字の急拡大は、日本における経済構造の変化が短期間にかなりのスピードで進行していることの証左と考えられます。
このスピードを全ての人が見誤った。
2011年、31年ぶりに貿易収支は赤字化しましたが、それは大震災と旧民主党政権下での円高放置という特殊事情に起因するものだと認識されていたと思います。
すなわち、それは一時的な問題で、トレンドを変化させるものではないと考えられていたのです。
大震災から徐々に回復し、旧民主党政権の悪政が解消されれば元に戻ると。

そして安倍政権の誕生を迎えました。アベノミクスによって円安が実現し、輸出企業は息を吹き返しました。さらに貿易収支も改善する「はず」でした。
しかし、元に戻らなかった。
貿易収支は改善するどころか悪化しつづけ、2013年度の経常収支黒字も1兆円を割り込み、赤字化が現実味を帯びてきました。
経済学者やエコノミスト達は、この事態を説明するための新たな理屈を考えざるを得なくなったのです。
本日は、そうした経常収支の赤字に関する是非論を考えたいと思います。

大雑把に言って、経常収支の赤字化(もしくは赤字定着)についての見解は二通りあります。
「経常収支赤字は悪」とする立場と「経常収支赤字は問題ではない」とする立場です。
さすがに、経常収支赤字が好ましいという見解はないようです。
経常収支を論じるにあたって、よく使われる理屈は三つ。
「国際収支統計の定義式」、「ISバランス論」および「国際収支の発展段階説」です。
簡単に解説しておきましょう。

国際収支の定義からすれば、経常収支と資本収支の和はゼロです(政府の為替介入や誤差は除く)。
それゆえ、経常収支の赤字は同額の資本収支の黒字(外資の純流入)を意味します。
これは定義ですから異論を差し挟む余地はありません。

また、ISバランス論は、「経常収支=財政収支+民間収支」という事後的に成立する恒等式を「右辺から左辺への因果式」と解釈する仮説です。
この仮説からすれば、経常収支が黒字か赤字かという問題は、国内(各部門の貯蓄投資差額)に原因があることになります。

最近よく引き合いに出される国際収支の発展段階説は、経常収支と経済発展とを関連づけた仮説です。
国民経済は、外国資本に依存する「未成熟な債務国」から発し、徐々に経済発展を経て「成熟した債権国」となり、遂には「債権取崩し国」へ至ると。
そのプロセスに対応して経常収支が赤字から黒字へ、そして最終的に赤字化するとされます。
現在の日本は、貿易赤字を所得収支(「第一次所得収支」)の黒字が埋め合わせて経常収支の黒字を保っている「成熟した債権国」の段階と考えられています。
本日問題にしている経常収支赤字が定着するのは、「債権取崩し国」の段階です。

先ず経常収支赤字は問題ないとする見解を見ておきましょう。
「経常赤字は経済発展の特定の段階に達した以上、仕方がない。経常赤字であっても経済成長率が高ければ問題ない。両者は無関係なのだ」というのが代表的なものでしょう。
日本の対外純資産は300兆円を超えているので、それを取り崩すにはかなりの年数がかかるから今心配する必要はないとする見解もあります。

他方、経常収支は悪いとする代表的見解は次のようなものです。
「経常収支赤字は、ISバランス論より、民間収支の黒字(国内貯蓄)が財政赤字を埋めきれないことによって生ずる。結果的に日本経済は『双子の赤字』に陥ってしまう。国内貯蓄の減少によって国債の国内消化が難しくなり、それを補填する外資流入のためには長期金利が上昇せざるを得ない。それが更なる財政悪化をもたらすことになる」というシナリオです。
救いがない。困ってしまいますね。金利が上がることはないと思われますが、それは別の機会に譲りましょう。

さて、この見解の論者たちは、そうした事態に陥らないように「財政再建と成長戦略を早急に」という決め台詞で締め括るのが通例です。
このパターンはよく経済マスコミに登場しますね。
どんな経済事象に対しても、解説後に脈絡なく付ける捨て台詞です。
世論誘導の意図は明白なので論評に値しませんが、この「刷り込み戦略」は学ぶ必要があるのかもしれません。

私としては、経常収支赤字の善悪を論ずる前に、その原因たる貿易赤字の問題解決に注力すべきだと考えております。
貿易赤字の解決が経常赤字の懸念を払拭するのです。
国民の大多数にとって重要なのは暮らし向きですから、経済成長を阻害する要因を除去するのが先決だと思います。

実は経済学者が真面目な顔をして論じている「経常収支赤字と経済成長率が無関係であること」は当然であって、あえて論う必要などありません。
両者を比較することに意味はないからです。
経常収支には所得収支が含まれておりますが、所得収支はGNP(国民総生産)やGNI(国民総所得)に含まれますが、GDP(国内総生産)には含まれません。
他方、経済成長率はGDPの増加率ですから、両者に直接的な関係などないのです。

経済成長(率)に関係するのは貿易収支(正確には貿易サービス収支)です。
それはGDPの構成項目であり、GDP統計に見られるように外需寄与度という形で関わっているのです。
しかし、関係はあるのですが政策的に操作はできない。手出しはできないとされています。
輸入は自国のGDPの動向に依存し、輸出は世界経済の動向に依存しているからです。
何を輸入するかは民間の決めることですし、さすがに世界経済を操作することも不可能でしょう。

ただし、そうした一般論を離れることによってはじめて、有意な現実的含意が得られることも事実です。
私は、経済社会学の立場からそうした方向を指向し、かつ奨励しているのです。
輸出の動向が世界経済のそれと明白に乖離した部分、また輸入の動向が自国の経済成長率とはっきりと乖離した部分を見ることによって経済構造の変化を読み取ることができます。
トレンドで捉えられない部分に注目するのです。
さて、日本の場合はどうでしょう。

財務省の「貿易統計」から貿易収支の内訳を見ますと、二つの特徴的な変化が見て取れます。
13年における電気機器の輸出の黒字額が、07年のピーク時より6兆円も減り1.7兆円になっていること。
同様に鉱物性燃料の輸入の赤字額が09年と比べて13兆円増え26兆円弱になっていることです。
構造変化によって、貿易収支に実に20兆円の赤字圧力が加わっていたのです。

明らかに、われわれの予想を超えて産業の空洞化は進行していたのです。
たった数年で日本は家電製品や情報端末に関して完成品の輸入国へと転じつつあるのです。
部品を輸出し、完成品を輸入する。どちらの価格が高いかは言うまでもない。
また、良識ある論者が指摘するように、原発停止によるLNG輸入額の急増がボディーブローのように日本経済の体力を奪っているのです。

解決策は明白です。
空洞化を止めるためには、海外進出企業が国内回帰した場合の優遇策を提示することです。
カントリーリスクの拡大した現状では効果的でしょう。
また従来から言われている国内投資への支援策も重要です。
投資減税ならびに融資の支援です。

原発再稼働が進まない理由は、ただ一つ。
原子力規制員会の存在です。
安全審査が滞っているなら人員を増やせばよいだけの話ですが、それをしない。
委員長を含めてたった5人の委員が、その頑固な学者の意向が日本の国力を削いでいるのです。
安全は大事です。しかし100%の安全確保は不可能です。
過度なる安全性を要求することは、安全という美名の下での「ごり押し」に他なりません。
日本のエネルギー安全保障と折り合いをつける必要があるのです。
旧政権の遺物である委員会の改革こそが、無意味な経済特区の創設以上に優先されるべきだと考えるのは私だけでしょうか。

現在の日本において問題なのは、徒に将来の経常赤字を憂慮することではなく、現在の貿易赤字の原因をしっかりと把握し、その具体的な対策をとることなのです。
それが結局、経常赤字の懸念を払拭する早道なのだと思います。


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