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【藤井聡】問題なのは「政府の借金」ではない,「民間の借金」である.

-藤井聡教授FBよりシェア-

今日の,増税問題がもちあがっている「基本的な前提」について,今朝のメルマガで,ある英語記事を引用しつつ,論考をまとめました.

過去の経済危機のケースを一つ一つ確認してみると,今,多くの論者が懸念を表明している「政府の借金」が原因で経済危機が生じたケースなど,全くない(!),ということが示されています.

一国の政府方針を決めるにあたっては,こうした地道な実証的議論に基づいて議論を組み立てていくべきではないかと,当方は考えます.


ご関心の方は是非,ご一読ください.



問題なのは「政府の借金」ではない,「民間の借金」である.

今,来年秋の10%への「消費税増税」の是非を巡り,様々な言説がメディア上でも取り上げられるようになりました.

その「増税反対論」は当然ながら,それが,日本の「デフレ脱却」を妨げ,多くの国民が仕事を失い,仕事を持っている方々でも所得が大きく減少してしまう,しかもそれらの傾向は,都市部より地方部,大企業よりも中小企業,資本家よりも労働者…..という形で,いわゆる強者よりも弱者において顕著となってしまうから…..ということを,明示的あるいは暗示的に認識しているものと思います.

普通に考えれば,この「危惧」が,相当程度払拭されない限り,来年秋の10%への増税など許容することはできない,というのが,常識的,良識的判断であることは,疑いを入れません.

一方で,増税を是認する方々が準拠しているのは,当然ながら,「増税することが,日本国民のためになるのだ」という予断です.

では,その予断の具体的内実とはどんなものかといえば,その典型的なものは,下記のようなものです.

(学者)
http://diamond.jp/articles/-/29836

(政治家)
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/140910/stt14091017500012-n1.htm(※1)

すなわち,これらのご主張の背後にある「物語」を簡潔に申し上げれば,次のようなものだと言うことができるものと思います.

「今や日本政府の財政は,借金が対GDP比で2倍を上回るほどの危機的状況にある.

増税しなければ,日本は深刻な経済危機を迎えてしまう.だから,増税が必要だ.」

もちろん,こういう予断が100%間違いである,ということを証明することはできません.

つまり,増税が国益のためにこそ必要なのだ,というロジックを完璧に否定することは,神様あらざる人間には不可能なのです.

が!

人間にでもできることはあります.

それは,人間の「知性」でもって(理論やデータの力を借りながら)「上記の予断が間違っているという疑義は濃厚なのではないか?」という可能性を突き詰めて考える,という知的活動です.

そんな「知的活動」の一つとして,次のようなコラムが公表されています.

「政府の借金は問題じゃない.民間の借金こそが問題なのである」

Government Debt Isn’t the Problem—Private Debt Is
http://www.theatlantic.com/business/archive/2014/09/government-debt-isnt-the-problemprivate-debt-is/379865/?single_page=true

このコラムの主張は文字通り,そのタイトルが示している「政府の借金は問題じゃない.民間の借金こそが問題なのである」というものです.

もう少し解説すると,このコラムが主張しているのは,次のような趣旨です(下記は直訳でなく,当方の解説です).

『リーマンショックやバブル崩壊,アジア通貨危機,ユーロ危機などの「経済危機」は,政府の借金が増えることによってもたらされる....と多くの経済学者や政治家は信じている.

しかし,そうした危惧は,単なる幻想である疑義が濃厚だ.

実際に過去のデータを見てみれば,すべての経済危機の直前における「政府の借金の対GDP比率」は,一律,「低い」のが実情である.

その「水準」が低いだけでなく,その「増加率」もまた低いのが実態だ.

つまり,政府の借金が大きいことやそれが増えていくことが,経済危機の源泉だという言説は,単なる幻覚的妄想にしか過ぎない,というのが,過去のデータから実証的に示唆されているのである.

では,政府の借金でなければ,いったい何が,経済危機をもたらしてきたのかと言えば,それは,「民間の借金」の高さ,ならびにその急増である.

つまり,経済危機というものは,政府の借金ではなく,民間の借金によって引き起こされるものなのである.

これこそが,過去のデータによって示されている真理なのだ」

具体的に翻訳しますと,このコラムでは,次のように述べられています.

「1929年の大恐慌の直前も,
1997年のアジア通貨危機の直前も,
1991年の日本のバブル崩壊の直前も,
いずれにおいても「政府の借金の対GDPは比較的低かったのであり,かつ,その増加率も低いのが,実態だったのである.

2007年のリーマンショックの直前についても,アメリカでは,中東での戦争や社会プログラムのために支出が大幅に増えていたにも関わらず,政府の借金の対GDP比率は10年前に比べて特に増えてはいなかったのである.

1991年の日本のバブル崩壊の直前,1997年の韓国のアジア通貨危機の直前においては,政府の借金の対GDP比率の五年間の増加率はほぼゼロだったのである.

最近のスペインの経済危機の直前において言うなら,借金の対GDP比率は16%も減少していたのである.」

The ratio of government debt to GDP was relatively low, and its rate of growth flat, before the crash of 1929, the Asian crisis of 1997, and the Japan crisis of 1991. In the United States, even with its Middle Eastern wars and a major increase in social program expenditures, the ratio of federal debt to GDP was no higher in 2007 than it had been a decade before. The five-year increases in government debt to GDP in Japan as of 1991 and in South Korea as of 1997 were both near zero. In Spain, before its recent crisis, government debt to GDP declined by 16 percentage points.

一方で,「経済危機」の前に何が急増していたのかというと.....民間の借金総額,である,という実証データが紹介されています.

このコラムの二つ目のグラフ(Japan Crisis of 1991: GDP, Public Debt, and Private Debt)は,そのことを明確に示しています.

http://www.theatlantic.com/business/archive/2014/09/government-debt-isnt-the-problemprivate-debt-is/379865/?single_page=true

このグラフの「1991」のところに縦線が引いてありますが,この線はバブル崩壊を示しています.

そして,「public debt」の線を確認ください.これは「政府の借金」という意味です.

で,この線,1991年のバブル崩壊まで,GDPの線(一番太い実線)と,ほぼ「平行であることを,ご確認いただけると思います.

このことはつまり,バブル崩壊直前まで,「政府の借金の対GDP比率は,一定水準を保っていた」ということを意味しています.

一方で,「private debt」の線をご覧ください.これは,「民間の借金」を意味しています.

ご覧のように,1975年から1991年にかけて,着実に増加しており,1985年頃から急激に増えていることがわかります.

そして,その「増え方」は,GDPの増え方よりも一貫して大きいことをご確認いただけると思います.このことは,つまり,「民間の借金の対GDP比率は一貫して増加し続けていた,そして,経済危機の直前には急伸していた」ということを意味しています.

さらに言えばこのことは,バブル崩壊は,「政府の借金の対GDP比率の伸び」で引き起こされたのではなく,「民間の借金の対GDP比率の伸び」によって引き起こされた可能性を含意していますよね.

理屈で考えても,それは簡単に合理的説明が可能です.

民間の借金がうなぎ登りに増えた,という事実は,「土地転がし」に代表される,「投機」の加速的な過熱化を反映したものと考えられます.

つまり,民間人のカネをたくさん持ってる人たちが(個人,法人問わず),さらに,カネを増やそうと考え,土地や株に「投資」するのではなく「投機」していったのです.事実,その頃は,投棄すればするほどにカネを儲けることができたのです.だから,そのカネ儲けのために,銀行から大量のカネを「借金」し,投機を重ねていった訳です.

こうしたことを,「一部」のカネ持ち達(決して,全員ではありません.バブルの時代にも真面目に暮らし,真面目に投資していた人が多数いたことを忘れてはなりません!)が,さながら気でも違ったように繰り返していったのが,皆さんご存じの通り「バブル」というものだったのです.

そしてそうした過剰な投機のための過剰な借金によって,「民間の借金の対GDP比率」は増えていきました.

ところが,バブルが崩壊すると「投棄すれば儲かる」という前提が崩れてしまいました.同時に,「カネ儲けのために投機を繰り返していた一部の人々」は返済できない程の多額の借金を背負ったが故に,彼らは今度は,借金を全く,ひたすら借金を返済する方向へと向かっていったのです.つまり彼らは,「(正常な資本主義経済を回すために不可欠な)正常な投資活動」を全くやめてしまったのです.

その結果,このグラフに示してある通り,民間の借金の対GDP比率は,今度は逆に,「右肩下がり」に,ひたすら減少していくこととなったのです....

こうなったとき,政府もまた,借金を増やさなければ,GDP,つまり,国民の所得(!)は,坂道を転げ落ちるように低下していくことになります.

したがって,GDP,つまり国民所得を守るために,政府は致し方なく,ニューディール的な財政支出を行ったり,そしてそれ以前に,制度として定められている失業対策や生活保護などの社会保障費が増やしていくことになりました.そしてその結果として,経済危機後,政府の借金の対GDP比率は右肩上がりに伸びていくことになっていく訳です.

このことは次のように言うこともできます.

すなわち,

1)GDP=国民の所得が伸びていくためには,誰かが「借金」をしなければならない,

2)健全なる資本主義では,その「借金」を「民間」がやり,それをサポートする格好で「政府」もまた借金をするものである,

3)ところが,経済危機が生じ,民間経済が不況となれば,民間が,十分に「借金」をして,GDPの水準を維持していくことができなくなる....

4)だから,結果として,経済危機後においてGDPの水準を維持していくために,政府は,

「民間がやらない借金の肩代わり」

をしてやるようにして,借金を増やしていかざるを得ない....

これが,このグラフに示されている,バブル崩壊後の政府の借金の急伸と,民間の借金の縮減です.

ちなみに,こうした経緯は,アメリカのリーマンショック前後においても,全く同じプロセスが生じていることが確認できます(このコラムの一つ目のグラフをじっくりとご確認ください).

さらには,先に直接翻訳した部分にも明記されているように,同様のプロセスは,1929年の世界大恐慌や1997年のアジア通貨危機,最近のユーロ危機においても認められる...ということが考えられます.

いずれにしても,こうして繰り返されてきた歴史的事実が含意しているのは,次の二点です.

第一に,「日本経済に多大なる影響を及ぼしうる要人達」の多くが危惧しているのとは裏腹に,経済危機は政府の借金の増進によってもたらされてきたのではなく,民間の借金の増進によってもたらされてきた,「客観的事実」です.

そして第二の,そしてさらに重要なポイントは,政府の借金を減らすために必要なのは,「民間の借金を増やすこと」という一点なのだ,というものです.繰り返しますが,GDP=国民の所得を守っていくためには,誰かが借金をせねばならず(それが,資本主義,というものの本質なのです),その借金を,民間が担わなければ,政府がそれを担い続けなければならない,という構造が,存在しているのです.

この第二の理論解釈が直接的に含意しているのは,次のような(多くの人々にとっては当たり前とすら思える,自明の)命題です.すなわち,

「日本政府の財政の改善を心から願う人々は,
デフレ脱却に,文字通りの『全力』を投入しなければならない」

いわずもがなですが,この命題は,今日の日本経済の状況における「緊縮財政」(すなわち,デフレ脱却の妨げとなる増税+政府支出の削減)の妥当性を,根底から覆すものであることは間違いありません.

....

以上は,当該コラムで紹介されている実証データを踏まえた上での,理論的結論です.

この結論に賛同されるか否かはもちろん,それぞれの個人の自由ではありますが,少なくとも藤井個人はこの結論を絶対的に確信しているという一点は,申し添えておきたいと思います.

一人でも多くの論者に,その「知性」を(自分自身の立ち位置を守るためではなく)真理に到達するための努力にご活用いただきたいと思います.

さもなければ,日本の未来は限りなく暗い最悪のものとなることを回避することは,不可能となるでしょう.

http://www.mitsuhashitakaaki.net/2014/09/16/fujii-108/


※1
高村氏、増税の必要性強調 「国債暴落に打つ手なし」

 自民党の高村正彦副総裁は10日、来年10月に予定する消費税率10%への引き上げを見送った場合のリスクに触れ、増税の必要性を強調した。「(財政再建に向けた)市場の信認を失い、国債が暴落すれば打つ手がほとんどない」と党本部で記者団に語った。

 同時に「増税できなければ社会保障経費を借金で賄う状況が続く。増税による経済失速にはそれなりに打つ手がある」と指摘。「増税できる経済環境を整えられるように全力で支援する」とも述べた。

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