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【藤井聡】山本五十六とTPP~日本人の愚かしさが日本を亡ぼす~

山本五十六とTPP ~日本人の愚かしさが日本を亡ぼす~



京都大学大学院教授 藤井聡

 『聯合艦隊司令長官 山本五十六』という映画が年末年始にかけて話題を集めている.この映画は,山本五十六の大東亜戦争前夜から戦死するまでの間の物語を描いたものである.

 その物語は,次のようなものだ──米国の国力をよく知悉していた山本五十六は,米国と日本の間の戦力の格差,ならびに,艦船や軍用機の生産能力の格差が圧倒的なものであり,全面的な交戦が始まれば勝機はないと確信していた.それ故に,彼は海軍省の次官の頃から開戦決定に至るまで終始一貫してその開戦に反対し続けた.ところが,多くの軍人や政治家,そして大手新聞社と,それに誘導された国民世論も,一刻も早い日米開戦を熱望する.

 当然ながら,開戦に義が不在であるわけではなく,山本五十六とてその義を十二分に理解していた.しかし「米国との戦い方」には,外交交渉から全面戦争(トータルウォー)に至るまで無限のヴァリエーションが存在している.ところが,単純な言説を主張し続ける新聞の論調に誘導された軍部も政治家も国民世論も,真の国益に資する熟成した議論を拒否し,全面戦争を主張し続け,最終的には開戦が決定される.

 そんな議論の過程の中で,山本五十六はあるシーンにて「米軍おそるるに足らず」と発言したある将校に対して,次のように冷静に問いただす.

 「その根拠は?」

 そう問われた将校は,言葉に詰まる.それを見た山本五十六は,「戦争について語る上で,その勝負について根拠の無い楽観論は許されません」,と冷静に窘(たしな)める.

 ───この山本五十六の台詞は,この将校に対してのみ発せられたものではない.それは日本の国民の「愚かしさ」そのものに対して差し向けられたものだと解釈することができよう.

 当然ながら開戦決定後は,山本五十六は日本の勝利に向けて邁進する.しかし,圧倒的な戦力の相違故に,そして無根拠なままに楽観論を口にし続ける人々の度重なる愚かな判断故に,戦局は悪化の一途を辿り,挙げ句に彼は戦死し,そして日本は敗戦を迎えることとなる────.

 以上がこの映画のあらすじである.無論,歴史考証やその解釈については様々な異論があることは間違いないだろうと思う(とりわけ,山本五十六そのものについては近年様々なタイプの評価が供出されている).しかし,日本国民の中に,この映画が暗示する「愚かしさ」が皆無であったのかと問えば,それは必ずしも否定できぬところではないかと思う.

 そしてそんな「日本国民の愚かしさ」は,平成日本においてもそのまま存在していると言わざるを得ないと筆者は感じている.

 その典型事例が,TPPを巡る議論だ.

 紙面の都合から具体の議論は他稿に譲ることとするが,現今におけるTPP反対論者は冷静な事実と根拠を踏まえつつ,国益の最大化を企図した判断を主張している.ところが,TPP推進論者は根拠を明示しないままに楽観論だけを振り回し,大手新聞メディアは「外に打って出よ!」という勇ましい社説を繰り返している───.

 言うまでもなく,日本の命運に関わる根拠の無い楽観論は日本の現実の国益を大きく棄損することとなる.そうである以上,TPP賛成論者が,反対論者が提示する疑問点に完璧に合理性ある形で返答できぬ限り,日本の国益は凄まじい水準で棄損されることは間違いない.

 だからこそ筆者は,筆者の願いが成就する見込みは針の先ほども無きものであるやも知れぬとは知りつつも,日本国民がこの映画に描かれている程の愚かしさを持ってはおらぬ事を,あるいはその愚かしき状態から覚醒せんことを,心から祈念しているのである.日本が滅び去る事があるとするなら,それは外国の脅威によってなんかではない.我々の内に拭いがたく胚胎され続けている「愚かしさ」こそが,日本を亡国の渕へと導く究極的な根源因なのである.

日刊建設工業新聞,所論緒論,1.26,2012.

http://trans.kuciv.kyoto-u.ac.jp/tba/index.php/b4/job/140-tpp-yamamoto.html

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