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【藤井聡】世界的経済学者・宇沢弘文氏が蛇蝎の如く嫌った「新自由主義」

-藤井聡教授FBよりシェア-

先日来よりその訃報が報道されておりましたのでご存じの方も多かろうと思いますが、宇沢弘文先生がこの9月にご逝去されました。

下記記事でも報道されておりますように、宇沢先生は、60年代、シカゴ大学経済学部の教授会でフリードマン教授と対立し、新自由主義の跋扈に当時から抵抗しておられました。

その後、宇沢先生が日本に戻られたのを契機に、フリードマン教授はやっかいな反対派が居なくなったとばかりに、70年代に彼の新自由主義の勢力を一気に拡大していったと伺ったことがあります。


ただし日本の東大に戻られた宇沢先生は、経済学部の当時学生だった西部邁先生に対して学術内容のみならず、アカデミズム界でのキャリアの行く末にも影響を与えたといいます。その後、西部先生は経済学と決別されますが、その後の思想的展開の中にも、宇沢先生のご主張の背景思想との共有部分を少なからず見いだすことができます。

誠に僭越ではありますが、筆者が従事して参りました研究や思想についてもよくよく考えますと、「モビリティ・マネジメント」(心理学を基本としてクルマからのモーダルシフトを促すアプローチ)や「築土構木の思想」の議論につきましては、宇沢先生の「自動車の社会的費用」や「社会的共通資本」の議論の中に、その源流を見いだすことができるやに思えます。

また言わずもがなですが、新自由主義に対する態度に至ってはそのまま共有していると考えることができるようにも思われます。こうした共有部分は、ともすれば西部邁先生を介して間接的に影響をお受けしていたと考えることができるかもしれません。

一度だけ、土木学会誌なる学会誌にて、ある特集を企画いたしました折り、宇沢先生にもご登壇いただき、西部先生にも同時にご登壇いただいた事があります。
http://www.jsce.or.jp/journal/thismonth/200801.shtml

今から思えば、そこでは宇沢先生は文字通り、先生の目からご覧になった「築土構木の思想」を論じておられました。そしてそのご議論は、西部邁先生の処女作たるソシオエコノミクスに明確に引き継がれていた様を改めて感じます。

宇沢先生なかりせば、今日の学術界、言論界は、今のそれとは異なっていたかもしれません。そして(butterfly effectを鑑みれば)、私自身の今の学術、思想、言論の諸活動も、大きく異なったものとなっていたのかも、しれません。

宇沢先生の訃報に触れまして改めて、先生が「蛇蝎の如く」忌み嫌った新自由主義者共が日々繰り返す、「合法的破壊」「合法的暴力」から守るべきものを守るために、一体何ができるのか-----これからも精進を重ね、考え続けたいとの意を新たに致した次第です。

改めまして、宇沢先生のご冥福をお祈り申し上げます。


世界的経済学者・宇沢弘文氏が蛇蝎の如く嫌った「新自由主義」
2014年9月28日 日刊ゲンダイ
「日本を代表する経済学者」といわれた宇沢弘文東大名誉教授が今月18日、肺炎のために死去した。大手新聞は一斉に訃報と、その業績、生きざまを書いていたが、そこにすっぽり抜け落ちていた部分がある。宇沢氏こそ、アベノミクスが推し進め、竹中平蔵慶大教授が旗を振っている「新自由主義」に真っ向から反対し、猛烈な批判を浴びせていたことだ。晩年の宇沢氏は「TPPは社会的共通資本を破壊させる」と唱え、「TPPを考える国民会議」も立ち上げた。宇沢氏の功績=アベノミクスの全否定になるのである。

 宇沢氏は1951年に東大理学部数学科を卒業した。経済学に転じたのは「世の中を救うのは経済学である」と考えたからだ。米スタンフォード大准教授、カリフォルニア大助教授、シカゴ大教授を経て、東大教授に。70年代以降は市場原理を優先する経済理論や、それを推進する学者の浅ましさを徹底批判したことで知られている。

 最晩年にインタビューし、宇沢氏が2011年、脳梗塞で倒れた後も親交を結んでいたジャーナリストの佐々木実氏はこんな思い出を語ってくれた。

「宇沢氏は新自由主義者のノーベル経済学者、フリードマンとシカゴ大で一緒でした。ある日、みんなでランチを一緒にしていると、フリードマンが怒っている。ポンド切り下げを見越して、空売りをしようとしたら、銀行から断られたというのです。それで怒っているフリードマンの言動に宇沢氏は心底あきれて、このエピソードを話されていた。稼ぐが勝ちという新自由主義もおかしければ、それを唱える学者の人間性にも怒っていた。ノーベル賞クラスの学者でしたから、竹中平蔵氏を名指しで非難はしていませんが、その政策や生きざまには批判的でした。実は宇沢氏と竹中氏は日本開発銀(現・日本政策投資銀)の研究所で一緒だった時期があるのです。その時に竹中氏が共著にすべき論文を単著で出して大問題になった。それを収めたのが宇沢氏なのですが、その竹中氏が新自由主義の旗振り役となって、日本をおかしくしているのですから、皮肉なことだと思います」

 宇沢氏は40年以上前、ベトナム戦争を批判された米国防長官が経済効率性を理由に胸を張ったことに愕然とし、「言葉に言い尽くせない衝撃を受けた」と語っている。以後、平等・公正・正義ではなく、「稼ぐ」ことだけを目的とした経済学に批判を投げかけてきた。人材派遣大手・パソナの会長として、巨額の報酬を得ながら、産業競争力会議のメンバーにもなって、パソナが得をする雇用改革を推し進めている竹中氏などは、宇沢氏にしてみれば論外で、蛇蝎のごとく嫌う存在だったのである。

「宇沢氏は学者が政府の会議に入ることにも批判的でした。宇沢氏の存在があったからこそ、教え子の学者たちは政府の会議で緊張していた。その重しがなくなると、どうなるのか、心配です」(佐々木実氏)

 竹中氏のようなエセ学者が跋扈しないようにメディアは宇沢氏の功績と懸念をもっと伝えなければならないが、大マスコミ自体が新自由主義に毒されているのだから、どうにもならない。
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