【藤井聡】「PB改善」のためにこそ「公共投資の拡大」を

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今政府では、財政再建計画や次年度の「骨太方針」の検討などが、急ピッチで進められています。

それに関連して、

  「PB改善」のためにこそ「公共投資の拡大」を


という原稿を公表いたしました。

一人でも多くの国民、ならびに、政府内外の関係者に、この考え方を伝えてまいりたいと思います。

皆様も是非、ご一読ください!


「PB改善」のためにこそ「公共投資の拡大」を

政府は6月上旬、財政健全化のために、プライマリーバランス(基礎的財政収支)を、「健全化計画の中間時点の18年度で(GDP比)1%程度を目安とする」という方針を明らかにしました。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDE02H02_S5A600C1PP8000/

現在、プライマリーバランスはGDP比で3.3%(16.4兆円)ですから、これを、今から3年間でおおよそ三分の一以下にする、という方針です。

本メルマガでも(都構想の言論戦を始める直前まで)再三説明してまいりましたが、プライマリーバランス(以下PB)に基づいて、経済財政政策を考えるためには、少なくとも以下の3つの「事実」だけは認識しておかねばなりません。
http://www.mitsuhashitakaaki.net/2014/12/23/fujii-122/

(1) PBは、財政再建のための「目標」でなく、「債務対GDP比(名目)」を引き下げるための、「手段」に過ぎない。

(2) PBを「緊縮財政」で「無理矢理に引き下げる」と、景気が後退し、税収が減少し、「かえってPBが悪化」する(過去、それが繰り返されてきている)。

(3) 一方で、「積極財政」を展開すれば、財政支出を拡大した年次のPBは悪化したように見えるが、翌年以降、景気回復と税収増がもたらされ、中期的にはPBが改善していく。

以上の(1)は公式文書に明記されている事実ですし、(2)(3)の傾向は、1998年以降の実証データを用いた分析から明らかにされているものです。

特に(3)について具体的に申し上げるなら、1兆円の中央政府の公共投資の拡大は、2.5兆円の中央と地方を含めたすべての「一般政府」の公共投資の拡大につながり、それらを通して、最終的に1.6兆円の税収増加がもたらされる、ということが、実証的に明らかにされています。
http://www.union-services.com/sst/sst%20data/2_57.pdf

今回、こうした傾向が改めて確認するために、再びデフレになった1998年以降のデータをあれこれと分析したところ、やはり(2)(3)が確認されたのですが、その中で、大変に興味深い傾向が見出されました。

それは、

「『ある年次』の『PBの悪化の度合い』(PB変化量)と、
『翌年』の『公共投資額が政府総予算に占める割合の減少量』との間に、
正の相関がある」

という傾向です。

つまり、PBが悪化すれば、その翌年の公共投資額が減る、という傾向があることが示されたのです!

その相関係数は、プラス0.47(ちなみに、p値というものは0.063という、一般に統計的に有意な傾向があると言われる水準です)。

これは、考えれば考えるほどに、「恐ろしい」傾向です。

そもそもこれは、「経済システムの自然な帰結」として、現れ出でた傾向ではありません。なぜなら、公共投資額は、

「政府の意図的な意思決定」

によって決せられるものだからです。

だから、因果の方向は未来から過去へは向かい難いことを考えると、この相関をもたらした因果メカニズムは、

「前年度のPB悪化が原因したから、政府が、公共投資額を削る意思決定をした」

というもの以外には、考えられないのです。

……返す返す、これは本当に恐ろしい傾向です。

なぜならこの結果は、

「わが国では、公共投資額は、『どういう公共投資が国益上必要なのか?』という論理で決められているのはない」

という事を示しているのみならず、

「1998年以降のデフレ時期であるにも関わらず、『わが国では景気が悪くなってきたのだから、景気を刺激するために公共投資を拡大しよう』という、世界中の先進国家にとっては常識的な論理がほとんど採用されてこなかった」

ということを示しているからです。

むしろこの統計結果は、

「PBが悪化してきたから、とりあえず、公共投資でも削っておこう」

という意思決定を、わが国は下し続けてきた、ということを、実証的に明らかにしているのです!

すなわち、デフレになった1998年以降のわが国の政府は、『緊縮財政の思想』によって完璧に支配されてきたのであり、少しでもPBが悪化すれば公共投資を削りシロにして、支出カットを繰り返してきた、という次第なのです。

これこそ、
http://trans.kuciv.kyoto-u.ac.jp/tba/wp-content/uploads/2015/02/douro/douro.pdf
のP15に示した様に、諸外国において公共投資額が拡大している中、わが国一国だけが、デフレ期であるにも関わらず公共投資額を過激に削減してきた

「政治的意思決定メカニズム」

なのです!

ここで、上記(3)にて述べたように、積極財政を行えば、税収が増える、という実証的関係が存在していることを思い出してください。

この傾向を考え合わせれば、わが国には、

「PBが悪化すれば、公共投資を削減する」という『政治的メカニズム』が存在していると同時に

「公共投資を削減すれば、税収が減って、PBが悪化する」という『経済的メカニズム』もまた存在している、ということになります。

だからわが国には、この「政治的メカニズム」と「経済的メカニズム」の「合わせ技」によって、一旦、PBが悪化すれば、公共投資を削り、それを通してさらにPBが悪化し、それによってさらに公共投資を削り……という「悪魔のサイクル」が存在し続けてきた、ということになります。

この「悪魔のサイクル」を断ち切るには、どうすればいいのでしょう?

言うまでもなく、「経済的メカニズム」を変えることはできません。それはいわゆる自然の摂理だからです。

ですが「政治的メカニズム」は変えることなど、容易くできるはずです。PBが悪化したからといって、公共投資を削ら「ない」ようにする、ことくらい、本来なら容易いことです。

むしろ「経済的メカニズム」を考えれば、PBが悪化した時こそ「逆説的」に税収を上げるために積極財政に転ずることが、その後の「PB」を改善するためには得策となるのです。なんと言っても、1兆円の中央政府の公共投資は、1.6兆円の総税収の増加を導いてきた、というのが、98年以降のわが国の実情なのです。

もちろん、PBが悪化した時に、PBをさらに悪化させるかの様に見える「公共投資の拡大」を政治的に決断するには、

「勇気」

が必要なのかもしれません。

しかし、「デフレ下の公共投資拡大⇒景気回復⇒税収拡大⇒PB改善」という「経済メカニズム」の存在と、それを裏付ける上記のような統計データの存在を理解するだけの

「知性」

があれば、公共投資の拡大という方針を、決して「蛮勇」ならざる「勇気」でもって「決断」することは決して難しい話ではないはずです。

是非ともわが国政府に、財政再建と経済成長の「二兎」を手に入れるための「知性」と「勇気」があられんことを、心から祈念いたしたいと思います。

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