【藤井聡】「沈黙の螺旋」を打ち破っていきましょう

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昨日配信しましたメルマガです。

「沈黙の螺旋」理論とは、ノエルノイマン、というドイツの社会心理学者の理論です。これもやはり、ナチスドイツの全体主義現象の解釈の中からでてきた理論です。

沈黙の螺旋は、破ることができる「ことがある」というお話です。


「沈黙の螺旋」を打ち破っていきましょう

日本で、成長戦略と言えば、規制緩和や自由貿易促進策やインバウンド(海外観光客の呼び込み)といった「ソフト的」なものが議論されることが一般的です。

筆者はもちろん、そういうものを否定するつもりは全くありません。それぞれの取り組みが、経済や社会に及ぼす「総合的」な影響を一つ一つ「精緻に吟味」しながら、是々非々で推進していくべきであることは論を待たないところです。

ただし、先週もお話しましたが、インフラ政策もまた、成長戦略の要とすべきであることは明白です。
http://www.mitsuhashitakaaki.net/2015/06/02/fujii-145/

しかしそうした主張が一般のメディア上でなされる様なことはほとんどありません。

むしろ、そうしたインフラ成長戦略論に言及すれば、瞬く間に、批判の嵐に晒されてしまうのが実態です。

つい先日も、次のような事がありました。

「大阪都構想」が、住民投票で否決されたことを受けて、あるテレビ番組(たかじんNOマネー)にて、大阪を豊かにするためには大阪を中心とした新幹線ネットワークの整備構想を進める他にありません、というお話を差し上げました。

この提言は、筆者が最近思いついた様な話ではなく、東日本大震災直後から構想している「大阪西日本首都構想」に基づくものです。

そして、今となっては、その事業性や便益性を学術的にも実証分析し、そのプロジェクトの合理性については当方としては一定の確信を得たものでもあります(詳しくは、下記学術論文を参照ください)。
http://trans.kuciv.kyoto-u.ac.jp/tba/wp-content/uploads/2013/12/F4_nezu_2013.pdf

ところが、この提案を番組で解説申し上げたところ、ある共演者は即座に、

「無駄ですよ、工事費の無駄! 無駄無駄!」

と発言し、当方の主張に対して「あきれ顔」で、

「昭和の発想ですよ。」

嘲笑混じりに非難されました。
https://www.youtube.com/watch?v=nCHKZRzIHwY

また、その動画がネットにあげられると、その共演者と同種の様々な非難が動画のコメント欄には、次のような書き込みがなされました(なお、当方は普段、ネット上での当方に対する誹謗中傷については取り立ててお相手差し上げることはないのですが、ここでは、あくまでも社会現象のサンプルとして、ご紹介差し上げます)。

「藤井氏の構想を聞いてて開いた口が塞がらなくなった。」
「やはりバカでした藤井教授」

さらに、インフラ論に対して毎回繰り返されてきた「シロアリ論」
http://bylines.news.yahoo.co.jp/kimuramasato/20150513-00045689/
https://www.youtube.com/watch?v=inixijJQ8QE
が、ここでもまた、繰り返されました。

すなわち、インフラの必要性を語る奴は、もっともらしい事を言っていてもそれは全部嘘っぱちで、結局は利権を得ることを目的にしてるだけだ、という論理が、ここでもまた繰り返されたわけです(下記も同様に、下記を書かれた方を非難するためでなく、大衆社会現象の単なるサンプルとしてご紹介差し上げます)。

「藤井氏の言ってることは、最初から最後まで(土木関係者の)利権を守るためだけ。」
「(藤井の提案では)明るい大阪の未来を作ることは出来ません。なぜなら既得権者を守ることを第一に考えているからです」

無論、こうした書き込みには、そうした主張の「根拠」など書かれているはずもなく、単なる誹謗中傷のための悪質なデマでしかありません。
(※ 例えば、こちらをご参照ください →  http://satoshi-fujii.com/150511-6/ )

しかしこうしたデマはその中身が「現実」のものではないとしても、インフラ論を語ろうとする論者を黙らせるだけの強力な心理的圧力を
「現実」
に持っている事は紛う事なき事実です。

同時にそれは、こうしたインフラ論批判の発言を「促す」圧力を陰に陽にもたらすものでもあります。大衆世論と一緒になってインフラを論ずる論者を叩けば、たやすく多くの支持を得ることができるからです。

それは、ポピュリズムを利用する政治家はもちろんのこと、
http://blogos.com/article/104509/
大衆人気に配慮するコメンテーターや言論人、知識人においても、インフラ論批判の発言を促すことにつながります。
http://www.nicovideo.jp/watch/sm19767115?ref=search_tag_video
http://www.nicovideo.jp/watch/sm21905458?ref=search_tag_video

学校のクラスの中で一旦イジメがはじめられれば、皆がこぞってイジメに加担しだす構造が、ここにもある、という次第です。

ネット上で誹謗中傷されれば、多くの人々は嫌な思いをしてしまうのであり、そんな嫌な思いをするくらいなら黙っておこう、ということで多くの人々が口をつぐんでしまうのです。

こうした構造を通して、インフラ論自体がますますメディア上で語られなくなっていき、その一方で、批判する声(例えば、シロアリ論)だけが声高に喧伝されるようになっていきます。

そうすると今度は、こうした「状況」それ自身がますますインフラ論者に対するバッシングを加速していくことになります。

一般に、社会心理学ではこうした社会現象は「沈黙の螺旋」と言われています。



すなわち、一旦上記のようなインフラ論に対するバッシングが始められると、仮に多くの人々がインフラ論の重要性を理解していたとしても、インフラ論を表だって語らずに「沈黙」してしまう、そうすると今度はその「沈黙」それ自身が、インフラ論についての発言をさらにしにくくさせる圧力を生んでしまう、つまり、「沈黙」がさらなる「沈黙」を呼び込み、沈黙がらせん状に進行していく、そしてこうした「沈黙のらせん」を通して、「こわばった空気」が形成されてしまうのです。

すなわち今日の日本では、インフラ論についての「沈黙の螺旋」が激しく進行し、インフラ論を「袋叩き」にする空気が濃密に存在しているのです。

こうした「沈黙の螺旋」は、いたるところで生じています。

エコノミストをはじめとした「一部の人々」の間では、今やTPPについては完全に「沈黙の螺旋」が生じ、ほとんど誰も反対意見を表明できなくなってしまっています。

消費税増税についても彼らの仲間内では、だれも反対できなくなっていますが、これもまた、「沈黙の螺旋」のなせる業です。

「積極財政によるデフレ脱却」にせよ、「プライマリーバランス撤回論」にせよ同様です。

そして、今年の1月ごろでは、大阪都構想について少しでも批判的な言説を表明すれば、すさまじいバッシングに合うような状況がありました。つまり、都構想を巡っては、強烈な「沈黙の螺旋」が存在していたのです。

しかしその沈黙の螺旋は、その後あっという間に破られていき、最終的にはギリギリのところで賛成派を反対派が上回り、大阪都構想は否決されるところにまで至りました。

あくまでも客観的な社会学的分析の見地からの一つの解釈論、として申し上げますが、1月27日に本メルマガで公表された『大阪都構想:知っていてほしい7つの事実』は、都構想をめぐる「沈黙の螺旋」を打ち破る契機を与えたと解釈することができます。

そしてその後も、本メルマガと超人大陸という動画サイト等を通して、コンスタントに都構想を批判する発言が公的に繰り返され、そのトーンについても徐々により激しいものに変遷させていったことで、一人また一人とそれまで「沈黙」を保っていた人々が重い口を開き、少しずつ都構想の問題点についての「発言」が増えていった、と解釈することができます。

そして、最終的にはもうどれだけ激しく都構想を批判しても、特に目立たない状況が創出されました。

すなわち、1月の頃には確実に存在していた「沈黙の螺旋」は、ものの数か月のうちにほとんど消滅していったのです。

つまり、「沈黙の螺旋」は純然たる社会学的現象ですが、その存在を理論的に明確に認識し、その上でそれを打ち破る意志を持ち、戦略的に立ち向かえば、幸運にさえ恵まれれば、あっという間に「打ち破る」ことができる「ことがある」のです(無論、そういう沈黙の螺旋を打ち破ろうとする人間が一人しかいないのなら、沈黙の螺旋を打ち破ることは不可能だったでしょう。しかし潜在的にでも打ち破ろうとする人々が様々に存在していたのなら、その人たちの社会的な力によって、そんな螺旋は打ち破られることがあるのです)。

例えば、「沈黙の螺旋」の典型例として挙げられるのが多い「裸の王様」のストーリーですが、あの結末も、穴居校はたった一人の子供が「王様は裸じゃないか!」と叫んだことで、瞬く間に憑き物がとれたように、皆が王様であったことを皆が認めるようになった、というものでした。つまり子どもの一言の叫び声で、「沈黙の螺旋」は打ち破られたのです。

繰り返しますが、わが国には今、ありとあらゆるところで「沈黙の螺旋」がぐるぐるとまわり、「真実」が「空気」によって隠ぺいされ、蹂躙され続けています。

冒頭で紹介したインフラ論しかり、積極財政論しかり、増税論しかり、TPP論しかり、プライマリーバランス論しかり、です。

ですが、それら理不尽な空気は全て単なる「沈黙の螺旋」がもたらしたものに過ぎません。つまり人々が口にしている言説は全て(それが学者であろうが政治家であろうが)、「言いやすいから言っているモノ」に過ぎず、真理・真実とは無関係な

「デマ」

にしか過ぎないのです。だから、明確な意思と戦略があれば、それを打ち破り、真理・真実に日の目を見させる可能性は、決して皆無ではないのです。

そして、インフラ、財政、自由貿易といった案件はいずれも、国家の命運を分ける極めて重要な問題ばかりです。そんな重要な問題の政治決定が、「沈黙の螺旋」によって形成された理不尽きわまりない不条理な空気だけで決定されて良いわけはありません。

ついては本メルマガの読者の皆様、是非、そんな「沈黙の螺旋」の陰がみてとれたのなら、(少々嫌がらせはされることはありますが、そこは果敢にスルーしながらw)、自らが正しいと思う言葉を、臆せず、発言し続けて参りましょう。

当方も、ついつい沈黙しがちになる自らの弱さを顧みつつ、できるだけの発言を続けて参りたいと思います。

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