【藤井聡】子どもの貧困率、問題は子育て世代全体の貧困化にある

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こちらも本当に深刻な問題です。
 (※ 今年のデータ発表は、来月あたりになろうかと思います)


子どもの貧困率、問題は子育て世代全体の貧困化にある
THE PAGE 2014年8月11日(月)

過去最悪を更新した子どもの貧困率

 2012年における、子ども(17歳以下)の貧困率は16.3%(厚生労働省「平成25年 国民生活基礎調査」)でした。2003年の13.7%から徐々に上昇し、過去最悪の値となってしまいました。子どものうち6人に1人が貧困という数値であり、学校のクラスでは平均的に5人程度いることになります。

 貧困率は相対的な指標です。可処分所得の大きさがちょうど真ん中の順位の世帯を中央値とし、その中央値の半分より所得が少ない世帯の割合を貧困率といいます。子どもは世帯に複数いたりするので、世帯とはやや値が異なります。中央値の半分の額を貧困線といい、2012年は122万円でした。貧困線は1997年の149万円から低下し続けているため、子どもの貧困率の上昇(2.6%ポイント)は数字上よりも深刻だといえます。

両親ともにいる世帯でも貧困率が上昇している

 背景として、母子世帯の経済状況が良くないことが多く指摘されています。確かに総務省(「平成23年度全国母子世帯等調査結果報告」)によると、2011年の母子世帯は123.8万世帯で、2006年から8.7万世帯増加しています。およそ4割の母子世帯はアルバイト等での収入に頼っていて、また、2割の母親は就業していません。そのため、母子世帯が増加すると子どもの貧困率は上昇します。

 しかし母子世帯だけでは、子どものうち6人に1人という貧困は説明できません。両親ともにいる世帯でも貧困率が徐々に上昇していることで、子どもの貧困率が上昇してきています。子どもの貧困率16.3%はおよそ200万世帯程度とみられ、そのうち140万世帯程度は母子世帯以外と計算されます。子育て世代全体における貧困化がすすんでいるのです。

 子どもがいる世帯についてグラフで見てみると、母子世帯など大人が1人の場合の貧困率は54.6%とやはり大きな数値です。ただ、1997年の63.1%からは低下しています。逆に、大人の数が2人以上の世帯の貧困率は1人親の場合より低い12.4%ですが、こちらは高まっています。

 児童(18歳未満の未婚の者)のいる世帯のうち、65.9%が生活が苦しいと答えています。これは高齢者世帯の54.3%を上回る数値です。子育て世代全体が問題のため、母子世帯等のための児童扶養手当制度等のみでは、子どもの貧困問題のすべては解決できません。

貧困率上昇の原因には男性雇用の変化も

 子どもの貧困率“上昇”の根本的な要因は、非正規雇用などの低所得層の拡大だと考えられます。しかも、女性よりも男性の雇用問題だと考えられらます。

 例えば、男性の非正規職員の割合は2013年に21.2%(厚生労働省「労働力調査」)で、2002年の15%から約6%ポイント上昇、人数では約180万人増加しました。35~44歳でも同期間に5.6%から9.2%へと上昇しました。

 非正規雇用が多いという点では、女性も置かれている状況は同じですが、男性雇用状況の変化も加わって子どもの貧困”率”が上昇しています。つまり、低所得(男性)、仕事なし(男性)、低所得(女性)、仕事なし(女性)の4つのパターンの掛け合わせです。この4つのすべてに対応する必要があります。

 現在、人手不足で、6月の有効求人倍率(季節調整済み)は1.1倍と求人数が求職者数を上回る状況です。けれども大きく改善しているとはいえません。正社員の有効求人倍率は昨年より上昇したとはいえ0.68倍にとどまっているからです。人手不足でも安定的で高い所得の職はなかなか見つけられない状況です。

 子育て世代の家計が直面しているリスクは、病気、会社の経営不振などで、夫が職を失ったときに次の職を見つけられないということです。低所得(男性)×仕事なし(女性)の組み合わせに変わることで、場合によっては突然貧困状態に陥る可能性があります。

家計がリスクを避けるための策は

 しかし問題は、正社員を増やす策がないことです。背景に製造業や建設業の縮小があるからです。とくに減少が加速したここ15年のあいだに、製造業では150万人規模で男性の雇用が縮小したと思われます。新興国でも比較的高度な電気製品が製造されている時代に、かつての日本の産業・雇用構造がよみがえるとは考えられません。

(注:ここでは情報通信業を含まない製造業を考えていますが、統計の定義が途中で変更されているためおおよその値です。とくに2002年以前の統計には製造業に情報通信業が一部(新聞・出版)含まれています。そこでの男性就業者数は、1992年にピークの約960万人で、2002年までに約150万人減少しました。その後、2003年から2013年までに、情報通信業を含まない製造業は約30万人減少しました。)

 そのような中で、家計がリスクを避けるための策は、次の職を見つけやすくすることでしょう。すなわち、雇用の保護を強めるのではなくより自由な労働市場、あるいは失業なき労働移動です。保護が強ければ、保護されない人も増えてしまい、それが子どもの貧困率上昇の原因となるからです。男性の職が相対的に失われている中で、女性がよりよい環境で働ける整備も必要です。

 アベノミクス第三の矢「女性が輝く日本へ」という政策方針はそのためにも必要です。女性の活躍は人手不足解消というだけではなく、両親ともに収入があれば、世帯における上のようなリスクを低下できます。また母子世帯の収入増加も求められます。

 ただ、それだけではありません。ここまでくると日本経済は変化を余儀なくされます。輸入を中心にコストが高まる一方で、実質賃金は低下しています。企業にとっては労働コストが上昇しない中で、しかし資本コスト(金利など)は安いままです。これは石油ショック後の状況に似ています。自動車や電気製品の輸出が伸びたのは、その1980年代でした。現状では従来型の産業が伸びるとは考えにくく、(産業にかかわらず)個々人の活躍が必要です。このとき、女性の企業活動における役割も大きくなるはずです。

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