【藤井聡】日本が救われる,最もあり得る有効なシナリオ

日本が救われる,最もあり得る有効なシナリオ


京都大学大学院 藤井聡


 今,日本の閉塞感たるや,凄まじいものがあります.繰り返すまでもないところかとも思いますが,それは,デフレの悪化,倒産,失業者,自殺者の増加,大震災の被災地の放置,これから訪れる巨大地震や世界大恐慌のショックに対する政府の無作為とそれに伴う夥しい量の国富と夥しい数の人々の生命等々....少し考えるだけで,鬱病にでもなってしまいそうになるような状況です.

 ....そして,今,日本全体がとんでも無い閉塞感に覆われています.

 しかし,こんな閉塞感は,簡単に打ち破ることができます.
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 つまり,今の日本は「もう,どうせ日本はだめなんだ....」というあきらめの気分に覆われているから,皆が思考を停止してしまっているわけですが,「どうすれば日本は救われるのか?」に思いを馳せれば,為すべき事がいくらでも見いだされるのです.

 つまり「頭を使うことを止めている」状態から,「頭を使う」状態に切り替えるという,たったそれだけのことで,日本には,前途洋々とした明るい未来が見いだされるのです.

 これが,資産もない,技術力もない,社会的秩序も幼いような国なら,どれだけ考えてもなかなか明るい未来は見いだせないかもしれませんが,今の日本には,先人達の努力の賜である資産,技術力,そして,社会的な秩序が,現代人の手にいくらでも残されているのですから,それらを活用しさえすれば,いくらでも,「自力」による日本復活のシナリオを描いて見せることなど簡単にできるのです.

 しかし,一番の問題は,「頭を使うことを止めている」状態から,「頭を使う」状態に切り替える事を,一人でも多くの日本人ができるかどうか───というその一点にあります.

 これができれば,明るい未来が開け,これができなければ,何時までも閉塞感に苛まれ,実際に日本は21世紀の世界史の中で沈没していくことは避けられないことでしょう.

 そんな時,求められる時に必要なものこそ,筆者は,「プラグマティズムの作法」なのではないかと考えています.

 プラグマティズムとは,パース,ジェームズ,デューイというアメリカの哲学者が有名ですが,彼等の振る舞い方を改めて再解釈したもの,それがここで「プラグマティズムの作法」と呼ぶものです.そしてこの作法は,至ってシンプルな,次の2つの作法から成り立つものです.


(プラグマティズムの作法)

 一つに,何事に取り組むにしても,その取り組みには一体どういう目的があるのかをいつも見失わない様にする.

 二つに,その目的が,お天道様に対して恥ずかしくないものなのかどうかを,常に問い続けるようにする.

 たったこれだけのシンプルな作法を守ることさえできれば,誰しもが,「頭を使うことを止めている」状態から,「頭を使う」状態に切り替えることができる───これが筆者の主張です.

 例えば,日本は今,次のような状態にあります.

 『多くの日本人が今、本来の目標からはかけ離れた、言うならば訳の分からない様な、得体の知れないような目標のために仕事をし続けてい(ます)。繰り返しとなりますが、多くの分野で、たくさんの偉い大学の先生達が、大真面目な顔をして、時に、崇高なる研究目的を嘯うそぶきながら....(中略)....ただ単に、自らの虚栄心を満たすためだけに研究を行い、議論を行い、学会活動を行っているのが実態なのです。実にたくさんのビジネスの現場にて、かつての日本人、あるいは、現代でも例えば「雷おこし本舗」の社長ならばその心の内に秘めているに違いない「三方良し」の精神が忘れ去られてしまい、拝金主義とも言いうるような「ビジネス」が展開されはじめています。そして、行政や政治の局面においても、例えば先に指摘したような「改革」や「維新」が進められ、何も問題が解決しないままに、様々なものが破壊されてしまっているのが実態なのです。』

(『プラグマティズムの作法 ~閉塞感を打ち破るこころの習慣~』 より)


 ところがもしも彼等全員がプラグマティズムの作法に則り、自らが従事しているその仕事には、一体どの様な目的があるのか、そして、その目的は本当にお天道様に顔向けできるようなモノなのかを吟味するなら、彼等は行動を僅かなりとも変えることになることでしょう.

 『例えば研究者であるなら、もしも自らの諸活動は実は自らの虚栄心のために進めてきたのだという一点に気づくことがあるなら、あるいは、単に学会の風潮に流されて研究を進めてきたのだという事実に気付くことがあるなら、きっと、彼の研究活動、学会活動はまったく異質なるもの転換することとなるに違いありません。....(中略)....例えば、拝金主義的な傾きの強いビジネスマンにおいては、自らの目標の崇高さを吟味する契機があれば....(中略)....かつての日本人の様に、「売り手」のみの利益のではなく「買い手」や「世間」にも配慮した商いに従事する傾きが強くなることは間違いないでしょう。同じように、「改革」や「維新」を叫ぶ人々においても、真面目に、真剣に自らのその主張の内容を吟味する契機があれば、その言葉の「勇ましさ」の裏にある「空疎さ」に思いが至り、自らの主張が実に「陳腐」なものにしか過ぎなかったのだという事実に思いが及ぶこととなるでしょう。』 (出典:同書)

 とはいえ、「全て」の日本人が、ある日突然、プラグマティズムの作法に従って振る舞い出すようなことはあり得ないだろうと思います。でもその問題については,筆者は次のように感じています.

 『一つの組織の中で、たった一人ずつだけでもプラグマティズムの作法に従って振る舞い出せば、その組織は著しく活性化することもまた、間違いないことであろうと思います。なぜなら、どうやら、非プラグマティックな振る舞いは、人間の根本的な「活力」を萎えさせる傾きを持つ一方で、プラグマティックな振る舞いは、人間の根本的な「活力」を活性化する力を秘めたものだからです....(中略)....だからこそ、それぞれの組織や集団の中のたった一人でも「プラグマティスト」が生まれ得たのなら、その活力は、その組織や集団内に影響を及ぼさざるを得ないのです。なぜなら、生きている以上は誰しもが「奴隷」になんかにはなりたくないし、できることなら「自由」に生きていきたいと考えるからです。そしてそういう風にして、その組織や集団の中にいながらにして「奴隷」ではなく「自由」に生きていくことが可能なのだという実例を一人のプラグマティストが他の人々に見せ付けることができるのなら、きっとその組織や集団の中に、また別のプラグマティストが現れることとなるに違いないのです────。』(出典:同書)

 ですから筆者は,三橋さんのこのブログエントリをご覧の方々(あるいは,上記の書籍にお触れ頂いた方々)の中の数千人、数百人、あるいは、数十人や数人の人間だけでもプラグマティズムとして生きていくことに成功することができるなら、その影響たるや「莫大」なものに成り得るに違いないと感じています。

 少なくともそうしたプラグマティスト達のプラグマティックな振る舞いは、それぞれが属している組織や集団全体に拡がり得るものです。そして、この日本社会全体は、そんな組織や集団によって構成されたものなのですから、ごく一部のたった数人の人々の、真面目で真剣なプラグマティズムの作法に従う生き方によって、その閉塞感の全てが打開されるという事態すら、決して考えられぬことなどでは無いと言うことができるのです。だとすると,そんなプラグマティストが,数十人,数百人,数千人いれば,もうそれだけで,その国は簡単に復活することになるんじゃないだろうか,とも感じています.

 ────以上が,筆者が感ずる,「日本が救われる,最もあり得る有効なシナリオ」です.このシナリオを信じてくださる方は是非,共にプラグマティズムの作法を携えながら,反省と悲観と楽観と希望を持ちつつ,日々の日常を処して参りましょう.


三橋貴明氏ブログへ投稿(2012.5.25)
http://trans.kuciv.kyoto-u.ac.jp/tba/index.php/b4/job/168-nihonga



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