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【藤井聡】「アンチ緊縮」という民衆運動

-藤井聡教授FBよりシェア-

「ギリシャ問題」について論じた論説です。
是非、ご一読ください!


「アンチ緊縮」という民衆運動

日本ではあまり取り沙汰されることはありませんが、今、ヨーロッパでは、

「アンチ緊縮運動(アンチ・オーステリティ運動:Aiti-austerity movement)」

が大きな民衆運動として様々な国で盛んに展開され、
http://antiausterityalliance.ie/

様々に報道されています。
http://www.bbc.com/news/uk-scotland-33210354
http://www.theecologist.org/green_green_living/2921348/antiausterity_movement_revives_radical_urban_squatting.html
http://www.channel4.com/news/europes-anti-austerity-movements-from-podemos-to-the-snp

このアンチ緊縮運動がとりわけ激しく展開されているのが、イギリス、ギリシャ、スペイン、イタリア等の欧州の国々です。

これらの国々はいずれも、2008年のリーマンショックを契機として、政府の「財政再建」、つまり、「政府の借金返済」のために増税をして政府支出を削る「緊縮財政」路線が強力に推進され、その

「結果」

として国民経済の疲弊が深刻化した国々です。

つまり、これらの国々は、「政府のせいで庶民が困窮している」わけで、これに対する反対運動として、アンチ緊縮運動が一気に広がったという次第です。

たとえば、激しい緊縮財政を行い、失業率を過去最高水準にまで達していたスペインでは、「アンチ緊縮」を旗頭に14年にパブロ・イグレシアスが結党したポデモス党が、熱狂的な国民支持を受けています。結党からわずか20日間で10万人以上の党員を集め、僅か一年後には国内で

第二番目

の党員を宿す大政党にまで一気に成長しています。

同様に、リーマンショック後の緊縮路線によって経済が大いに低迷したイタリアでも、人気コメディアンのベッペ・グリッロ氏が2009年に立ち上げた「五つ星運動」という政党が、同じく「アンチ緊縮」路線を打ち出し、国民からの熱狂的支持を得ました。そして2013年に行われた国政選挙では、

「第二党」

にまで大躍進しています。

昨年、世界の注目の的となったスコットランドの独立運動ですが、これもまた政府が進める緊縮路線に対する「アンチ緊縮運動」として巻き起こったものと位置づける事ができます。
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2014-09-20/2014092007_01_1.html

そして、「アンチ緊縮」の急先鋒といえば、もちろんギリシャ。

ギリシャでチプラス政権が誕生したのはまさに、「アンチ緊縮」という国民運動の一環ですし、何と言ってもこの度、EUからの緊縮案に対して「No」を突き付けた国民投票結果も、アンチ緊縮の国民運動の帰結です。

そもそも、今回のギリシャの国民投票は、直前の世論調査では、賛成派(緊縮受入れ)と反対派(アンチ緊縮)が完全に拮抗しており、結果はどうなるか分からないと言われていましたが───ふたを開けてみれば、23%もの大差で「アンチ緊縮」が勝利する結果となりました。

そもそも、EUが押しつけようとする「緊縮」を拒めば、EUからの支援が受けられず、ギリシャ国民はさらなる経済被害を受ける事になります。いわばEU側は、この「緊縮策を飲めばカネをやる、飲まなきゃつぶれろ」と言わんばかりの「脅し」をかけたわけで、投票前はその「脅し」に屈し、「今回だけは折れて受け入れないと、さすがにヤバイのでは……」という声がかなり多く、アンチ緊縮派を上回る勢いがあったわけです。

ところがいざ投票となった途端、多くのギリシャ国民はEUからの緊縮要請に対して圧倒的な「No」を突きつけました。つまりギリシャ国民は、EUからの緊縮要請を「こんなもの、食べればもっと酷くなる最悪の『毒まんじゅう』じゃないか!」と拒絶したわけです。

これからギリシャがどのような道をたどるのか、ますますわからなくなってきました。ただし、現時点でも「言える事」はいくつかあります。

まず、この結果を受けて、「ギリシャのユーロ離脱」の可能性が増進することになりました。無論それでギリシャのみならず、EUもまた(そして最悪のケースでは世界経済そのものもまた)痛手を一時的に被ることになりますが、その果てにギリシャ国民は、「通貨発行権」という尊い権利を手に入れることが出来るようになるでしょう(ただし、ギリシャの離脱は、ギリシャがロシアと接近する可能性が高まることを意味しますから、このリスクについて、欧米がどのように対応するかが今後の鍵となります)。

またそれと同時に、ギリシャにとって最も今求められている「国内産業育成」を見据えた「今回の提案よりも、より望ましい再建策」が模索される可能性が増進したとも言えます。ギリシャのユーロ圏離脱やロシアとの接近といったリスクを考えた場合、そういう声が、今よりも強くなることも期待できます(ですが無論、ドイツ国民はじめ、支援国の人々がそれに強く反発することもまた明白ですから、その反発がどの程度なのかもまた、今後の鍵となります)。

……と言うことで、ギリシャを巡る諸事態は予断を許さない状況です。

ただしどうなろうとも我々は、「貨幣統合なんて無理かもしれんが、とりあえずいいことだからやってみよう!」とうそぶいていた輩(=ユーロ提唱・推進者)や、「アメリカのサブプライム問題の時の様に、明らかにカネをかしちゃいかん奴にじゃぶじゃぶとカネを貸してボロもうけした輩」(=ドイツをはじめギリシャへのユーロ導入を認めた方々)には重大な責任があるということは忘れてはならないでしょう……。

ところでギリシャ問題には各国の様々な思惑が絡み合ったものですが、各国国民による「アンチ緊縮」の運動は、「自分たちの暮らしを守る」という「本能的」とすら言いうる社会的「抵抗」意識に根ざしたものであることは間違いありません。

例えば社会科学者カール・ポランニーは、そうした抵抗運動を「ソーシャル・プロテクション」(社会的抵抗)と呼びました。

すなわち彼は、(グローバル)資本主義経済が国内で席巻すればするほどに、各国国民の自衛本能として自ずと反発が捲き起こると考えた訳です。いわば、体内に異物が混入すれば反発(免疫作用)が発生するように、国家においても例えば「緊縮」という異物が混入すれば猛烈な反発が生ずるのも当然だ、という次第です。

言うまでもありませんが、免疫システムが作動するのは、その生体が「健康」である証拠。したがって、英国やギリシャ、スペイン、イタリアには、未だ、国民としての生命的活力が残されており、それゆえに、アンチ緊縮運動がおこったと解釈することができるでしょう。

一方でわが国日本では……「アンチ緊縮」運動はほとんどありません。

それ以前に、「アンチ緊縮」運動の存在自体が、ニュースで取り上げられてはいません。ギリシャについてもスコットランドについてももっぱら、単なる「住民投票」という政治的イベントに注目が当たっただけで、その背後に「アンチ緊縮」という国民運動が全欧的に存在している事実についてはほとんど注目されはしませんでした。

しかも、ギリシャ問題についても「怠け者のギリシャ人には困ったものだ」という論調がメディア上では繰り返し喧伝されているやに思われます。

しかし、今年「ブーム」にすらなったトマ・ピケティも、多くの国内の経済学者、エコノミスト達が崇拝してやまないジョセフ・スティグリッツ、ポール・クルーグマン、ジェフリー・サックスらも皆、今回の住民投票にてギリシャの「アンチ緊縮」派を支持しているのです。ところがそういう報道はほとんど見かけないのが実情です。
http://bylines.news.yahoo.co.jp/bradymikako/20150705-00047277/

さらに言うなら、過日の「大阪都構想」についての住民投票も、徹底的な「緊縮」路線を図る橋下維新改革に対する「アンチ緊縮」運動の結果として否決された、という側面を色濃く持つものなのですが、一部の例外…

www.mitsuhashitakaaki.net/2015/03/26/shimakura-20/

…を除くと、そうした指摘は、ほとんど見当たりません。

かろうじて、総理や官房長官、あるいは、自民党の中にもそうした緊縮路線に対する「アンチ緊縮」の態度を見せているという報道がなされていますが、それが欧州の様な「全国民的運動」につながっているかと言えば、必ずしもそうとは思えません。
http://jp.reuters.com/article/marketsNews/idJPL3N0ZI5UP20150703

日本では、増税まで行われているわけで、緊縮路線は濃密に進められているのですが(たとえば、カレツキー氏が指摘する通りです↓)、
http://jp.reuters.com/article/jp_column/idJPKBN0IO09C20141104?sp=true

それにも関わらず、なんら「アンチ緊縮」の方向の国民運動が起こってはいないのは、残念でとしか言いようのない世論状況、と言うことができるでしょう。

ひょっとすると、わが国日本は、緊縮という「異物」に対して抵抗出来るほどの「健康」を失ってしまっているのかも知れません。

つまりわが国は、右から左まで、若者から高齢者まで、日本の国民全体が衰弱し、緊縮に対して即座にアンチを張ることができるほどの「生体反応」が失ってしまったやに思えるわけです。今や「草食系」なのは、何もイマドキのワカイモンだけには限らない、という次第です。

……とは言え、わが国の「アンチ緊縮」の動きが皆無なのかと言えば、必ずしもそうではありません。アンチ緊縮の「言論」は多数派に至ってはいないものの粘り強く続けられており、少しずつ広がりを見せ始めているやに思われますし、緊縮の思想の塊であった都構想も「大阪市民」のちからでギリギリ否決されたのは事実です。こうした動きに、一縷の望みを託すことはできるかも……しれません。

いずれにせよ、国民の安寧、国家の安泰のために、「理性的」かつ「冷静」な「アンチ緊縮」の動きが是が非でも求められています。一人でも多くの日本国民が、「まっとうなアンチ緊縮」の運動に様々な形でご参加されますことを、祈念いたしたいと思います。

ではまた来週!

PS
冷静かつ理性的な「アンチ緊縮」運動におきます理論的な柱を提示すべく、この度「都構想」の住民投票後に、2週間でまとめました下記書籍、急ぎ、出版することになりました。是非、ご一読ください!



http://www.mitsuhashitakaaki.net/2015/07/07/fujii-150/
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