【藤井聡】「公共事業が日本を救う」中野剛志氏書評


学者の暴挙が日本を救う

「公共事業が日本を救う」書評

中野剛志

 著者の藤井聡氏は,土木計画学という分野で数々の業績や受賞歴をもち,若くして京大教授となった前途洋々の研究者である.その藤井氏が本書執筆前までの心境を次にように書いている.

「実際のところ,筆者は今まで,自分の専門についてまじめに研究をし,教育をすればそれで事足りると考えていた.だから,マスコミ報道や出版などで,少々専門的に不当でナンセンスな議論がなされていたとしても,それに対して何かを公的に発言するのは,自身の仕事ではあるまいと考えていた.むしろ,そういう意見も踏まえてながら,日本の公共事業をよりよいものに改善していけばよい,と考えていた.」

 どんなに世論が理不尽でも,このように考え,黙って自分に与えられた仕事を真面目にこなしてきた人々は,学者に限らず多いのではないだろうか.建設会社,電力会社,郵便事業者,僚など,世論の不当な非難や真実を歪めた報道がなされても,与えられた仕事を真面目にこなしてさえいれば,いつかは世論も変わるだろうと自分に言い聞かせながら,黙っていた人々は少なくないだろう.それに,義憤にかられて声をあげたとて,ますます叩かれるだけで,どうせ分かってもらえないのだから,黙っているのが賢い大人の対応というものだ.ところが藤井氏ときたらこのような本を出してしまったのである.

 本書は,公共事業について,治山治水はもしろん,産業競争力,環境,文化,はては財政問題と,あらゆる方面からの分野の枠を超えた総合的な検討がなされている.そして,強固な固定観念を打ち破るためであろうか.データや倫理を駆使するだけでなく, 分かりやすい語り口で,イメージが湧きやすい説得力ある事例をふんだんに盛り込んでいる.それらは読者の論理だけでなく,心理にも訴えてくる.例えば,本書が快刀乱麻で暴きだす,大衆迎合の学者や政治家たちによる数字の詐術には,どんな読者も,警告を通り越して,検察の証拠捏造に匹敵する怒りすら覚えるだろう.

 にもかかわらず,本書は,公共事業に対する世論や報道の歪みを正すことはできないだろう.人々を沈黙させる多数派の権力は鍬目手強大である.そのことは,社会心理学者でもある藤井氏なら,よく知っているはずだ.そして,大衆迎合の政治と喧嘩沙汰に及ぶような学者を学会がどのように扱うかも,十分分かっていたはずだろう.それなのに藤井氏は本書を出してしまった.義憤にかられて勝てる見込みのない戦いを仕掛けるのは,愚挙であり,暴挙であるというほかない.

 だが,藤井氏は知っているのである.正義のために敗北覚悟の戦いに挑むことほど痛快なことはないし,この痛快さは戦っている本人だけが味わえる特権だということを.






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