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【藤井聡】「街」をグローバル資本主義から守る 

-藤井聡教授FBよりシェア-

(男女群島の磯から、ようやく帰ってまいりましたw)

先週に書いておいたメルマガ、今朝、スタッフの方に配信いただきました。その直前に書いておりましたFacebookメッセージを膨らませた内容です。
是非、ご一読ください!


【藤井聡】「街」をグローバル資本主義から守る ~「歩くまち京都」四条通の取り組み~
http://www.mitsuhashitakaaki.net/2015/12/29/fujii-176/

2015年、世界はまさに激動の年となった。中東問題はフランス・パリでの同時多発テロやトルコ軍機によるロシア軍機撃墜にまで至った。また、南沙諸島では中国による人口島の埋め立てに対し、アメリカが自由航行権を主張すべく、米軍機を飛行させた。ウクライナ問題は解決の糸口さえ見えない。さらには、シリア情勢を受け、EU諸国へ大量の難民が流入している。

こうした世界情勢の中、各国経済はこぞって低調。なかでも、これまで世界経済牽引の一翼を担っていたように見えた中国経済が、著しく失速している。2016年の世界はどうなるのか。そして、日本にはどのような影響があるのか。

今年はわが国ではデフレが継続する中で、過激な自由貿易協定が大筋合意されると共に、(公共投資額不足を決定的な原因とする)集中豪雨による鬼怒川決壊などの天災に見舞われました。一方で海外では同じく世界的デフレが進行すると共に、それに伴う紛争やテロが様々に勃発しました。

要するに国内外共に、グローバリゼーションを背景として経済がますます停滞すると共に、景気さえよければ発生するはずもなかった様々な不条理があちこちで見られるようになってしまったのが、2015年の特徴でした。

その傾向は去年よりも今年の方が顕著となり、そしておそらくは来年も緩和するどころかさらに悪化することは間違いないでしょう。

こうした中で我々はどうすべきかと言えば―――身近な問題から国政やグローバル経済に関わる諸問題について、自身の「手の届く範囲」でできることを一つ一つ積み重ねていく他ありません。

さて、そんな「身近な問題」の一つとして、当方が関わってきたものとして、今住んでいる町、「京都」の問題が挙げられます。

京都では、「あるく街京都」というスローガンの下、昨今の「モータリゼーション」、すなわち、過剰なクルマ依存化に伴って、多くの人々がまちなかから「郊外」に活動の場を転換させてしまったことで生じた様々な問題を改善し、まちの賑わいを取り戻し、京都を活気づかせる様々な取り組みを行っています。

近年、様々な街が疲弊し、「シャッター街」と呼ばれるすさんだ状態に追い込まれているのは、この「モータリゼーション」(過度な自動車依存化)が、最大の原因です。

クルマを使えば、必然的に人々は町中よりも郊外に活動の場を求める傾向が強くなります。この傾向が進めば、町中は寂れ、グローバリズムで流れ込んできた外資も含めた大資本が投下した郊外の大型ショッピングセンターが賑わうようになります(さらに言うと、モータリゼーションはグローバル資本主義の重大な帰結ともいえます)。

そうなると、その街のキャッシュ(おカネ)は、どんどん外国を含めた余所の地域に流れていく事になります(例えば、筆者らの研究室の調査では、「商店街」で使う一万円は5~6千円程度は京都市内に留まるのですが、「大型ショッピングセンター」では、京都市内に留まるのは一万円の内たった2千円程度であることが分かっています)。

こうしたヒトとカネの郊外化は、当然ながら街の中心部への投資の縮退をもたらし、最終的には当然「サービス劣化」をもたらします。

京都市のみならず、あらゆる都市が、このモータリゼーションとグローバル資本主義による「都市の衰弱」の流れに対抗すべく、様々な施策を展開しているのですが、あらゆる街で、街の防衛戦線は「敗戦の色」が濃厚となっているのが実態です。

筆者もこの街の防衛に向けて、学識者の一人として様々な街でお手伝いしているのですが、その中でも二十年以上にわたって持続的にお手伝いをしてきたのが、京都の街です。

例えば、(秋口から春まで)毎週金曜日の朝7時からの4分間、KBS京都ラジオで「クルマ利用はほどほどに」「クルマで京都が見えますか?」といったコーナーで、クルマ利用がダイエットや健康、家計に悪い影響を及ぼしている一方で歩くことがいかに素晴らしいか――といった事を、ここ五年ほどお話していますし、そこでお話している内容については、こんな動画も配信しています。

https://youtu.be/DRjW7HzUPwc
https://youtu.be/C3erF38l6T8


運転免許センターの免許書き換え講習の資料として、こうした情報をまとめた冊子を京都都市圏の全ドライバーに配布したり、京都に引っ越してきた方々に、公共交通のマップや時刻表を配布したり……そうした施策のアドヴァイスを差し上げたりもしてまいりました。

そんな「歩くまち京都」の取り組みの一環として、この度、京都の都心の最大の目抜き通りである「四条通」の「クルマの車線が歩道に転換され、歩道が広げられる」という事業が、つい先日実施されました。

つまり、
「クルマの車道が片側一車線分、歩道に転換」
されたのです。

この事業は、10年もの歳月をかけて様々な関係者と調整が図られてきたもので、地元の方々やタクシーやバス業者の方々との度重なる協議を経て、ようやくこの度、実現されたものです。

これで四条通はますます歩きやすくなり、クルマ利用から公共交通利用や徒歩への転換(モーダルシフト、と言われます)が促され、街にさらに人が集まり、さらに活気づくことが期待されています(事実、既に売り上げが伸びた等、そういう報告も耳にすることが増えてきました)。

実を言うと、多くの都市が、こうした「車道から歩道への転換」を図る取り組みを目指しているのですが、その調整の難しさ故、ほとんど実現していないのが実情です。

そんな中、京都でこうした道路空間の歩道転換が実現したのは、実に

「画期的」

な取り組みとなっています。ついてはこの取り組みについてとりまとめた論説を下記にご紹介差し上げますので、まずは是非、ご一読ください。

『四条通り、「あたり前」のしつらえ転換』
              京都大学大学院教授・内閣官房参与 藤井聡
https://www.facebook.com/photo.php?fbid=732175943550018&set=a.236228089811475.38834.100002728571669&type=3

 「四条通り」と言えば、京都の街を象徴する目抜き通り。京都を代表する百貨店が並び、高級ブランド店が軒を連ねる。祇園祭では長刀鉾が鎮座し、山鉾巡行はまさにここでハイライトを迎える――そんな四条通りは京都の街の象徴であり、顔である。だから四条通りに品位と威厳が確保されればそれは京都のまちの品位と威厳に直結する。

 では、四条通りは一体誰のためのものか?

 もちろんそれは京都人全員のものだが、何よりも、そこに訪れ、街を楽しむ人々のものである。彼らは四条通りに「歩いて」訪れ、買い物をしたり食事をしたりしながらその賑わいを楽しむ。

ただし同時に、四条通りはそれを「道路」とみなして「通過」するドライバーのものでもある。とはいえ彼らは沿道の店をじっくりと眺めることも、賑わいを楽しむこともない――。

 つまり「歩く」人々にとっては四条通はその賑わいを楽しみ満喫する「空間」である一方で、ドライバ-にとっては単なる「無機的な道路」に過ぎないのである。

 しかも、「四条通りに歩いて訪れる人々」は、(手元のデータから推察すれば)昼間おおよそ最低六万人。一方で「四条通を通過する自動車台数」は、昼間でその2割程度の約一万台強。だとすると四条通りは、一体誰の事を思いやりながら「しつらえ」ていくべきかと言えば――「数」から言っても「来訪の質」から言っても、「自動車」よりも「歩く人」をできるだけ「優先」していくのは「当たり前」の話なのである。

 この度ようやく、四条通りはそんな「当たり前」の方向でその「しつらえ」が変えられることになった。

歩道が広げられ狭い空間に押し込められていた歩行者はゆとりを持って歩くことができるようになった。一方で自動車は、工事が始められた当初でこそ混乱したものの、データを見れば既にその混乱はほぼ収まっている。ドライバー達は皆、の四条通りの「歩行者のため」の変化を理解し、その利用を遠慮しはじめたのだ。結果、今となってはほとんどかつてと変わらぬ時間で四条を通過できるようになっている。

 つまりこの度の四条の「しつらえ」の大転換は、自動車をほとんど混乱させないままに、四条利用者の大多数を占める「歩く人々」に、より豊かで良質な時間と空間を提供することに成功したのである。

 つい先日、うちの家内の母もそれと知らずに四条を訪れ、そのゆったりとした歩行空間に驚き、大変満足して帰ってきた。同じように新しい四条通りをまだ「歩いて」いない方は是非ゆっくりと訪れてみて欲しい。きっとそこで皆さんは母と同じく、想像もしていなかった「歩いて楽しい街の空間」を発見するのではないかと、思う。

・・・・

以上、この取り組みの趣旨をご理解いただけましたでしょうか?

ただし、この工事が始められた今年の春先には、産経などの新聞メディアでは

「世紀の愚策」

とまで言われ、大きな反発が生じていました。

例えば、http://www.sankei.com/west/news/150607/wst1506070010-n1.html ※1

確かに、工事が始められた春先の一時期、道路が混雑したのは事実ですし、何らかの問題が生ずればそれに対する批判に耳を傾け、対策を図っていく姿勢を保ち続けることは必要不可欠ですが……今やそうした激しい渋滞は観測されていません(ネット上にそうしたデータは転がっていないようですが、そういう調査データがあることは確かです)。

繰り返しますが、
  四条通を使うクルマの交通量

  四条通りを使う歩行者の交通量
を比べると圧倒的に歩行者の方が多いのが実情です。

そして四条通が「歩きやすく」なったのは紛うことなき事実であり、しかも現時点では激しい混乱はみられていないのが実情ですから、こうした、
歩く人にやさしい道路空間の再配分
は、「世紀の愚策」というような評価は著しく不当であって、至って「当たり前の話」としか言いようがない……と考えます。

産経などのメディアは、構造改革や都構想、TPP等の公益を棄損する危険性が極めて高い「改革」はしばしば猛烈にプッシュする一方で、こうした都市空間の再配置、インフラに関わる「改善」については、どういうわけか、バッシングをする傾向が強いようです。

おそらく、世論に迎合するとそういう事になるのかもしれませんが、新聞メディアが勝手に世論を忖度(そんたく)してそんな報道を続ければ、まともなインフラ「改善」を阻害する世論が実際に作られてしまう事は事実です。

まったく困ったものです。

いずれにしても、こうした「モータリゼーションやグローバル資本主義から街を守る取り組み」は、グローバル企業のみならず、メディアや世論からの反発もあり、「街」側が大変厳しい状況に追い込まれているのですが、当方としても手の届く範囲で、今年のみならず来年もまた、イメージではない「適正な事実情報」をお伝えする発言を可能な限り続けていきたいと思います。

では、今年もいろいろとありましたが…..よいお年を!

※1
四条通の歩道拡幅は「世紀の愚策」か
2015.6.7 09産経west
 京都市内のタクシー運転手さんから聞こえてくるのは、いまだに「四条通の渋滞」のぼやきだ。原因は車線を減らして歩道を広げる拡幅工事。市の対策もあって一時に比べると渋滞は緩和されつつあるのに、ドライバーたちの不信感は根深いように思える。

 工事は、観光客のために歩きやすい街をつくろうという試みで、すでに一部は完成。歩行者にとっては非常に快適になった。一方、渋滞に巻き込まれたドライバーたちはイライラ。「市役所は四条通が混んでいるのを知っているのか」といった殺伐とした批判も相次いだ。ある運転手さんは「世紀の愚策ですよ」と手厳しい。

 京都は景観対策として看板規制も厳しく、こうした施策は商工関係者からは評判が悪い。とはいえ、観光を優先することが悪いとも思えない。むしろ、こうした施策で観光資源が守られ、京都の観光を支えてきたと思う。

 今回の問題では、車線を減らして歩道を広げる手法の是非よりも、市の見通しの甘さが気になる。市は当初「四条通の工事による大きな影響はない」とし、大渋滞を予想すらしていなかった。これが根深い不信の要因のひとつだと思う。

 渋滞が緩和し「のど元過ぎて熱さを忘れる」では、さらに不信が広がるだろう。市は別の幹線道路でも歩道拡幅を計画している。これを機に同じことが起きないよう、丁寧な課題検証をしてほしいと思う。

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(午後3時50分~午後7時)
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