【藤井聡】「詭弁」(ウソ話)こそが、敵の真の正体です。

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橋下氏が市長を退任されました。

その機会に改めてこれまで展開してきた「言論戦」全般を振り返った上で明らかになった事......を取りまとめました。
是非、ご一読ください。


「詭弁」(ウソ話)こそが、敵の真の正体です。
http://www.mitsuhashitakaaki.net/2015/12/22/fujii-175/
橋下氏が先週18日に、大阪市長を退任されました。

この退任は、本年の5月17日の都構想の住民投票に「政治生命」をかけ、「都構想に敗れれば政治家を辞する」という投票運動をしかけたにも関わらず、住民投票に「敗れた」ことが原因です。つまり、かの住民投票は、「大阪市を存続させる」のみならず「橋下氏の市長退任(政治家退任)を導いた」ものでもあったわけです。

さて、筆者はこれまで、都構想等をめぐる橋下氏の言説の多くが、

「詭弁」

に塗れたものである、そして、詭弁に基づく政治は断じて許してはならない、という趣旨の批判を、例えば、


http://www.mitsuhashitakaaki.net/2015/02/10/fujii-131/

http://www.mitsuhashitakaaki.net/2015/02/17/fujii-132/
http://satoshi-fujii.com/shinnihon2-151103/

等で論じて参りました。

そもそも「詭弁」とは、広辞苑によれば、

「一見もっともらしい推論(ないしはその結論)で、何らかの虚偽を含むと疑われるもの。相手をあざむいたり、困らせる議論の中で使われる。」
というものです。筆者は橋下元市長の言説に対する批判を通して、通常では決して得る事のできない「詭弁」について深く考える機会をたっぷりと頂くことができました。

そして橋下氏が市長を退任し、都構想や大阪の行政改革に対する批判よりもむしろ、より包括的な新自由主義者や緊縮論者達の言説に批判を加えようとして、「驚くべき事実を」改めて深く認識する様になりました。

それは、彼らの言説は、我々と見解が異なる方々の意見などではなく、ただ単に「何らかの虚偽を含む言説」すなわち、

「詭弁」

に過ぎなかった、という事実でした。

(たとえば、こちら
https://www.facebook.com/Prof.Satoshi.FUJII/posts/728709473896665?pnref=story

その典型例として、まずは下記文章を確認ください。

「日本は貿易立国であり,今やグローバリゼーション・自由貿易が世界の潮流となっている.しかも,少子高齢化で内需の拡大は望めないため,日本が経済成長するには外に打って出るしかないのである.つまり,国際 競争で勝ち抜くためにTPPなど自由貿易協定の締結を 急ぎ,輸出に不利な円高に対して政府・日銀は手を尽くさねばならないし,法人減税や規制緩和など企業の競争 力を高めることも必要である.また景気対策として推し進めてきた公共事業は効果が薄く,不用意に無駄な投資 を続けた結果,借金だけが膨れ上がってしまった.増え続ける社会保障関連の出費もかさみ,日本の財政状況は 先進国最悪であり,破綻はすぐそこに迫っている.社会保障費や復興費用を賄い,財政再建を果たすには消費税をはじめとした増税は避けられない.さらに,長年悩まされているデフレ脱却のためにも,新たな成長戦略による景気の好転を期待したい.」

これは、「新自由主義」の平均的な言説をとりまとめたものです。
http://trans.kuciv.kyoto-u.ac.jp/tba/images/stories/PDF/institute_paper/2012_06_haru/tanaka.pdf

この言説の一つ一つを、それが詭弁か否かと言う視点でチェックしていきますと、驚くべきことに、そのほとんどすべてが詭弁である、という事実が浮かび上がってまいります。

以下、一つずつ確認していきましょう(ただし下記文章は少々難解かもしれませんので、読みづらいとお感じの方は、「――囲み」の下の文章まで読み飛ばしください)。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「日本は貿易立国であり」
⇒この文章では、「貿易立国」の定義が曖昧で、何を意味するのかが不明である。その一方で、この言葉は、貿易によって日本経済が成長したという印象を与え得るものである。したがって、この文章は実際上は「何も語っていない」にも関わらず、「特定の印象を与える」ことが可能となっている。これは、曖昧な言葉を使いながら特定の印象操作を図る詭弁である「語彙曖昧の詭弁」と呼ばれるものである。

「少子高齢化で内需の拡大は望めない」
⇒「少子高齢化で内需の拡大は望めない」と断定されているが、少子高齢化でも内需が拡大できることは自明である。それ故、これは、「因果関係誤認の虚偽」と呼ばれる詭弁である(誤った因果関係を根拠に結論付ける詭弁)。しかも、「少子高齢化であれば内需拡大は100%できない」という趣旨となっているが、これは、「全称の誤用」と呼ばれる詭弁でもある(「全て」がそうであるとは言え「ない」ことを、「全て」がそうだと主張する詭弁)。
 なお上述のように「内需の拡大は望めない」という主張の「根拠」が「詭弁」であるため、「日本が経済成長するには外に打って出るしかない」という主張もまた正当ではない。

 しかも、こうした理由で「日本が経済成長するには外に打って出るしかない」という主張が正当でないが故に、その帰結として語られる「TPPを急ぐべし」「法人減税や規制緩和など企業の競争力を高めることも必要」という主張それ自身も、必ずしも正当ではない。
 つまり、論理を語るにおいて、その根拠となる「一事」だけについて「さらり」と詭弁を弄し、それがさも正当であるということにしておけば、その「一事」から「正当に演繹できる言説」をすべてが、(仮に不当なものであっても)「正当」であると印象付けることに成功するのである。ここで重要なのは、その「一事から、それら言説を演繹する論理は全て正当である」という点である。この特徴故に、そうした言説は極めて尤もらしく見えてしまう。しかし、その前提それ自身が「ウソ」であるので、そこからの論理がどれだけ正当であっても、そこで論じられる全ての主張は、全体として完全なる「ウソ」話に過ぎない。なお、今日の多くの「経済学論文」は、この意味に於いて「完全なるウソ話」に過ぎないのであるが、それが、経済学会の権威、経済学者の権威によって隠ぺいされ続けているのが、実態である。

「景気対策として推し進めてきた公共事業は効果が薄く,不用意に無駄な投資 を続けた結果,借金だけが膨れ上がってしまった.」
⇒公共事業の景気対策としての有効性は、実に様々な研究で実証的に示され続けている。にも関わらず、「景気対策として推し進めてきた公共事業は効果が薄く」と断定されている。あるいは、「不用意に無駄な投資 を続けた」という点も特に根拠なく断定されており、かつ、そのせいで「借金だけが膨れ上がった」という事も断定されている。
こうした特定の施作や主張に対する「ネガティブな主張」は、仮にその根拠が不在でも、多くの人々は「火の無い所に煙は立たず」と認識することから、そのまま受け入れてしまう。これは、煙の無い所に無理やりに煙が立っているかのように喧伝することで、多くの人々がそこに「火」があると勘違いさせるタイプの詭弁である「幻法水煙」の詭弁と呼ばれるものである。これはいわば、「濡れ衣を着せて、評判を貶める」というタイプの詭弁である。

 同様の「幻法水煙」の詭弁は、「日本の財政状況は先進国で最悪であり,破綻はすぐそこに迫っている.」という言説にも当てはまる。そもそも、日銀がこれだけ強力に金融緩和を推し進めている状況で政府が「すぐに破綻する」とは到底考えられず、これもまた「濡れ衣」の類である。しかも、「日本の財政状況は先進国で最悪である」からといって「破綻はすぐそこ」とは結論づける事は不可能である。前者と後者の主張は因果関係的つながりは存在しないのであり、それ故これは、「因果関係誤認の虚偽」でもある。しかも、「破綻」という言葉の定義が不明瞭である一方で、この言葉を使えば日本の財政に対してネガティブな印象操作を可能とするものであるから、その点に於いてこれは「語彙曖昧の虚偽」でもある。

「財政再建を果たすには消費税 をはじめとした増税は避けられない.」
 ⇒経済成長ができるなら、増税をせずとも財政再建が可能であることは、改めて論ずるまでも無く明白な事実である。それ故、増税のみが財政再建を果たすと主張することは、明白な「虚偽」である。つまり「ウソ」としか言い様のないものである。こうした単なる「ウソ」は「詭弁」とすら言いがたいものであるが、あえてこれを何らかの詭弁に分類するとするなら、「大衆にウソに基づいて訴えかける」という「大衆に訴える論証」と解釈することも可能である。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――

以上、少々難しい内容だったかもしれませんが―――とにかく上記の考察が意味しているのは、平均的な新自由主義の言説は、詭弁の観点から確認すれば、ほとんどすべてが「詭弁」に過ぎぬものなのだ、という点です(上記で詭弁と指摘した文章は、元々の文章の9割以上を占めています)。

そうである以上、大阪を席巻した都構想をめぐる言説も、日本、そして世界中を席巻している新自由主義的言説も、双方とも「詭弁」の類にしかすぎぬという点で、なんら相違するものではないのです。

そもそも繰り返しますが、詭弁とは要するに、(事実、あるいは、論理についての)

 「ウソ」

を意味します。だから、結局は、都構想をめぐる言論戦も、マクロ経済政策に関する言論戦も、後者の方が(国内外の大学教授や官僚、政治家達によって)「品よく」論じられているかのように思われるかもしれませんが、よくよく吟味すれば、双方が詭弁である限りにおいて結局は五十歩百歩のウソ話にしか過ぎなかったのだ、という次第です。

したがってそれは、それらの言論戦はもう既に「論争」ですらなく、単に「ウソを暴くことができるか否か」あるいは「ウソであるという正当な認識を広めることができるか否か」という戦いとなっていることを意味します。

無論、そのウソをウソと理解できない方々は、こういう主張が不当なものであると感じ、感情的な反発を差し向けることでしょう。

そこがこの言論戦の特徴です。

それはさながら、得体の知れない新興宗教を信じている人々が陥っている「明らかな過ち」を、根拠を示しつつどれだけ粘り強く説得を続けても、得られるものは納得などではなく、単なる反発、さらには「憎悪」にしか過ぎないという構造となんら変わるものではありません。

もちろん、そうした説得が失敗しても、不幸になるのは彼等だけなら、放置するしかないということになるのですが―――統治制度や経済政策などの「政治」においてそのような「新興宗教まがい」の思い込みを放置し続ければ、我々は巻き添えを食らい、社会全体が大きな被害を被ってしまうのです。

したがって「政治」におけるウソと詭弁は、断じてならない――これが、2500年前のソクラテスの時代から引き継がれてきた常識中の常識なのですが、その常識が今、わが国において急速に失われつつあるのです。

――以上、本日は橋下氏の市長退任にあわせて感じたことをお話いたしました。要するに、我々が展開してきた言論戦の「真の敵」は、個人でも政党でも、さらには思想ですらなく、結局は、

「詭弁というウソ」

だったという次第です。
(※ ホント、「至誠」ってのは大切ですねw)

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