【藤井聡】民主主義の終わり 施光恒氏

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「民主主義の終わり」・・・・切ないお話です。


【施 光恒】民主主義の終わり
http://www.mitsuhashitakaaki.net/2015/12/11/se-70/
前回のメルマガ記事では、大筋合意が得られたTPPの条文(暫定案文)に日本語訳がないことを問題にしました。また、TPPの正文は、英語、スペイン語、フランス語であり、日本語が入っていないことも指摘しました。

去る12月3日の衆議院の審議(内閣・農林水産連合審査会)で、ほぼ同様のことを、福島伸享議員(民主)が取り上げています。

福島議員と甘利明大臣のやりとりが大変興味深いので、下記のリンク先の動画をぜひご覧ください。

「衆議院TV インターネット中継」(2015年12月3日(木)、上から七番目の福島伸享議員の質疑。TPP案文の翻訳に関することは、福島議員の質疑開始の5分30秒後あたりから12分後ごろまで。甘利大臣の答弁は8分後あたりから。)
http://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php?ex=VL&deli_id=45355&media_type=wb

まず、福島議員が、「概要だけではなく、TPP案文全文の日本語訳を公開するのか、しないのか」について尋ねます。

すると甘利大臣は、だいたい、次のように回答します。

「英語っていうのは世界共通語でありますから、この種の条約をするときにはですね、日本とどこかの国の二国間協定でも日本語が使われない場合がある。TPP協定の場合は、正文は英語、スペイン語、フランス語だが、解釈問題が生じたときは英語が優先するということになっています。ですから、スペイン語、フランス語でやってもですね、この主張がこうだとおっしゃっても、英語が優先することになっております」。

つまり、甘利大臣は、質問をはぐらかし、そのうえで「TPP協定の条文解釈権は英語のみにある」ということを強調します。

甘利大臣の答弁は、質問に対する回答になっておりませんので、福島議員はあらためて下記のように質問します。

「TPP域内では日本のGDPは非常に大きい。日本語を正文に加えるべきだという交渉をなぜしないのか。正文にしないというのなら、仮訳でもいいから、なおさらすぐに日本語に翻訳して、国民的議論を巻き起こすのが日本国の政治家としての役割ではないか」。

再び答弁に立った甘利氏は、「日本語訳についてはTPP協定が署名されてから出す」と述べたのち、さきほどと同じことを繰り返します。

「例えば、(TPP条文の)フランス語と英語の解釈が違ってきた場合には、英語が優先するんですよ、これは。どういう解釈の違いだと競った時には、英語が優先するんですよ。これは大事な話ですよ、本当に」。

このように、「解釈権は英語にあるのだ」と繰り返す甘利氏の回答は、まとはずれな印象を与えるものです。TPPの案文だけでなく、甘利氏の言葉も翻訳が必要なようです。たぶん甘利氏は、以下のように言いたいのでしょう。

「英語は、世界共通語である。フランス語やスペイン語が英語と並んで正文に加えられる一方、日本語がそうならなかったからといってフランス語やスペイン語を羨んだり、日本語が正文から落ちたことで私を責めたりしてはならない。フランス語やスペイン語が正文に加えられたと言っても、解釈権は世界共通語たる英語にあるのであり、実質上、フランス語やスペイン語も日本語と変わらないのだから」。

甘利氏のこの発言、大変情けないと思います。

特に、「英語が世界共通語である」などと、日本の責任ある政治家がすんなりと認めてしまっていいのでしょうか。

ビジネスマンの発言ならまだ理解できます。しかし、政治家は、それも「国家百年の計」たるTPP交渉を指揮する政治家が、「英語が世界共通語である」と公言してはばからないのは大問題です。

確かに、現在の世界では、事実上、ビジネスや政治の言葉として英語は大いに優勢です。ですが、いうまでもなく、これは、日本をはじめとする非英語国の国民に一方的に不利な立場を押し付ける不当な、公正ではない世界のあり方です。

だからこそ、TPP交渉を指揮する政治家や、実際に交渉に当たる官僚は、「せめてTPP域内では、日本人が活躍しやすい場を作り出してみせる! 日本語や日本の商慣習がなるべく認められ、日本人がなじみやすく能力を発揮しやすい環境を実現するぞ! 日本企業や日本人の海外進出が少しでも楽になるように後押しするのだ!!」というぐらいの気概をもつべきだったのではないでしょうか。

TPP域内では、日本は、アメリカと並んで圧倒的な経済大国です。こうした主張をしてもまったくおかしくなかったはずです。

それなのに、最初から、「英語は世界共通語だから」と言っているようでは、ハナから交渉になりません。

くわえて、TPP条文の最終的な解釈は英語条文に依拠するということも、これも、日本など非英語国にとっては、非常に不利なことです。この不利益も、もっと強く意識し、他の非英語国と連携のうえ是正できなかったのでしょうか。

TPP条文は、今後、法的には、日本の国内法よりも上位に来ます。我々の生活を律するかなり多くのルールが、我々の日常感覚では判別できない英語の微妙な解釈に左右される恐れが出てくるわけです。これは民主主義の観点から、とてもまずい状況です。

日本語も正文として認めさせ、そして正文として認められた言語には、それぞれ同等の解釈権を付与すべきだ、と主張し、交渉するべきでした。

11月20日付の三橋さんのブログでも引用されていましたが、『日本農業新聞』の記事(2015年11月19日付)の伝えるところによると、外務省の担当者は、TPP交渉で「日本が日本語を正文にしろと提起したことはない」とあっさり認めています。

外務省は以前、日本語が正文に含まれないことについて、日本がTPP交渉に遅れて参加したことを理由に挙げていました。しかし、これはその場しのぎの言い逃れだったようです。日本と同様、後から参加したカナダは、ケベック州などの国内の一部でしか使われていないフランス語も、正文として認めさせました。

矛盾を突かれた外務省は、『日本農業新聞』のこの記事によれば、フランス語話者に配慮することは「カナダには政治的に非常に重要な課題だ。日本語をどうするかという問題とは文脈が違う」と言い放ったそうです。ひどい話ですよね。

現在の日本の指導者層の人々は、悲しいかな、ホント「内弁慶」ではないでしょうか。国内では「若い人は内向きでけしからん!」「グローバル化の時代だから、これからは中小企業も外に打って出ろ!」「攻めの農業だ!!」などと、とても勇ましく国民を煽るのに、国際交渉では、将来の日本人の生活を大いに左右する言語の問題であっても、やすやすと譲ってしまいます。
(-_-;)

TPP条文の日本語訳の公開は、結局、甘利氏が述べているように、TPP協定の署名後になるようです。それまでは、国会議員を含む大多数の日本人は、TPPの全容を理解するためには、難解な法律用語からなる膨大な英文を読み込まなければなりません。大多数の日本人にとって、TPP条文の全容を把握し、吟味することは、実際上、非常に困難です。TPPの内容に関し、十分な国民的議論ができるわけがありません。

そして、TPP条文の日本語全訳がやっと公開されたあかつきには、政府は、まず間違いなく、今度は次のように言って国内の異論を封じるのでしょう。

「TPPの内容については、これはもう国際的に決まったことだから、つまり、いわば『国際公約』なのだから、いまさら覆すことはできない。 他の交渉参加国に迷惑をかけるわけにはいかない!」

このようにして、日本国内の制度や政策は、十分な民主的審議を経ることなく、グローバルな投資家や企業にのみ有利な形にどんどん変えられていくのでしょう。

ほんと、ヤレヤレですね…
(´・ω・`)

長々と失礼しますた…
<(_ _)>
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