【藤井聡】「自民政調会長、TPP「経済の法の支配貫徹」首肯しかねる発言

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与党の政調会長の講演録ですが,筆者の長年の公共政策に関する研究を踏まえると,首肯しかねる発言が散見されます.あくまでも,一学者としての私見を下記に申し述べます.

「アジア太平洋地域の価値観を共有する国々で経済における法の支配を貫徹させる大きな意義がある」
⇒「法の支配」という言葉が,是々非々を尊重する法の精神の支配,といことを意味するものであるなら,このご発言には完全に同意しますが,万一,この言葉が,単なる法令順守の重視を主張しているとするなら,これは由々しきご発言です.なぜなら,経済の運営において何よりも大切なのは「是々非々」の態度だからです.「法の支配」が一定必要なのは認めるとしても,それを文字通り「貫徹」させた時,「経済が不測の事態に陥っても無為無策を決め込む,あるいは,法に従ってさらに悪化させる対策を実施してしまう」ということが生ずるのは,経済政策論における初歩の初歩,です.

「日本が二流の小国に転落するか、改革を進めて新たな局面を迎えるか、正念場にさしかかっている」
⇒これは「都構想をするか,大阪の衰退を甘んじて受け入れるか」という,都構想推進派のレトリックと全く同じ.つまり,「改革のみが二流の小国に転落することを食い止める唯一の策」であることを前提としていますが,これはすさまじい事実誤認なのです.クルーグマンが結論付けたように,改革をしなくても,例えば,積極財政で成長は可能なのです.

「医療や介護といった社会保障を推進するために、赤字国債の発行を余儀なくされている現状を『不道徳だ』と指摘。」
⇒赤字国債の発行=借金が不道徳,という発想は,完全に家計の感覚です.会社経営においては,融資を受けて(=借金をして)投資をして,事業を拡大していくことが「善」なのですから,借金それ自身が不道徳とは,決して言えないのです.むしろデフレの今は,民間が負債を避ける状況の中で経済を回していくためには,政府が民間の肩代わりをして負債をしてやって,経済をなんとか持たしていく...のは,「正義」,そのものなのは明白です.

・・・

以上,いかがでしょうか?

なお,政府は与党のお考えを最大限に重く受け止める必要がありますが,政府判断と与党判断との間で調整が必要となるケースも多々ございます.

そんなことも踏まえながら,最終的なご判断は読者各位の皆様方にお任せしたいと思いますが,上記はいずれも,日本の経済政策を考える上で極めて重要な論点ですので,是非,ご一考ください.


自民政調会長、TPP「経済の法の支配貫徹」 富士山会
2015/11/21 日経
 自民党の稲田朋美政調会長は21日、長野県軽井沢町で開いた日米の政府関係者や専門家らが対話する第2回年次大会「富士山会合」(日本経済研究センターと日本国際問題研究所が共催)で講演した。日米が主導する環太平洋経済連携協定(TPP)の大筋合意について「アジア太平洋地域の価値観を共有する国々で経済における法の支配を貫徹させる大きな意義がある」と評価した。

 南シナ海での米海軍による「航行の自由作戦」に触れて「日本にとってもエネルギーを運ぶ重要なシーレーン(海上交通路)であり、自由な海にすることは世界の財産だ」と語った。集団的自衛権の行使を可能にする安全保障関連法の成立は「日米同盟の強化にも、アジア・太平洋地域の平和と安全にも意義のあることだ」と強調した。

 安倍政権の今後の優先課題を「経済、経済、経済だ」と力説。「日本が二流の小国に転落するか、改革を進めて新たな局面を迎えるか、正念場にさしかかっている」と述べ、規制改革や女性活躍の重要性を訴えた。

 医療や介護といった社会保障を推進するために、赤字国債の発行を余儀なくされている現状を「不道徳だ」と指摘。財政再建に取り組む姿勢も強調した。

 自民党は結党60年記念式典を開く29日に、日清戦争以降の歴史を検証する「歴史を学び未来を考える本部」(本部長・谷垣禎一幹事長)を発足させる。稲田氏はこれに関連して「決して歴史修正主義ではない。日清・日露戦争から現代に至るまで政治家も客観的な史実を学び、現代に生かすことが必要だ」と語った。

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