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【藤井聡】国民がつくる新幹線、新幹線がつくる国民物語

-藤井聡教授FBよりシェア-

新幹線で国土をつなぐ......ことの意味を、是非一度、じっくりとお考えになってみてください。


国民がつくる新幹線、新幹線がつくる国民物語
http://www.mitsuhashitakaaki.net/2016/02/02/fujii-181/

北海道新幹線の函館開通(以下、函館新幹線と略称します)が目前に迫った今、こういうコマーシャルがにわかに注目を集めています。
https://www.youtube.com/watch?v=f78fvddOiKk (ロングバージョン)
https://www.youtube.com/watch?v=yXe9le73znU (ショートバージョン)
(※お読みになる前に、是非一度、短いCMですからご覧になってみてください!)

これは、地球調査に訪れた宇宙人(トミーリージョーンズ)が、日本の現代の民俗に様々に触れ、それを一つ一つ不思議に思いながら報告していく――という人気CMシリーズです。

CM冒頭(ショートバージョン)で、この宇宙人が「この惑星の住人はなぜそこまでして新幹線をつなげたいのか」とつぶやきます。

石川さゆりはその疑問に答える様に、「私は(鉄道よりも)連絡船の方が好きだったな」とつぶやき、『津軽海峡冬景色』を「♪津軽海峡~」と鼻歌で歌います。

そして北島三郎が「函館の女」を「♪はるばるきたぜ函館~」と口ずさみ、「命がけでトンネルを掘った甲斐があったなぁ」とつぶやきます。

このセリフはもちろん、1982年に封切られた、高倉健、吉永小百合、森繁久彌らが出演した映画『海峡』という青函トンネルをつくった国鉄技師らの物語を暗示しています。

CM冒頭(ロングバージョン)で、宇宙人は次のように語ります。

「この惑星の北海道と本州は、かつて船でつながっていた。
24年と言う歳月をかけてトンネルを掘り、
さらに28年と言う歳月をかけて今度は新幹線が走るらしい。
なぜ、そんなにもつなげたいのだろうか」

ちなみに、青函トンネルは、1155人もの犠牲者を出した青函連絡船洞爺丸事故に対する深い悲しみと反省の下、その開通が決定され、つくられたものです。

そもそもかつての青函連絡船は、北海道と本州をつなぐ唯一のものでしたが、なぜ、青函(つまり青森と函館)がつなげられていたかと言えば、日本人は近代化の過程で、日本という国を北の大地まで広げる「北海道開発」という夢を抱き、日本の未来の可能性を北海道に見たからです。

その日本人の思いの象徴が青函連絡船や青函トンネルだったのであり、そして21世紀の今、そうした思いを全て引き受けるかたちで函館新幹線が開通されようとしています。

つまり、日本をひとつにつなげていく―――この思いこそが、日本人が一貫して抱き続けた深い思いなのであり、それこそが、「なぜ、そんなにもつなげたいのだろうか」という宇宙人の疑問に対する答えなのです。

その思いは、社会科学では一般に「国民統合」を希求する思いと言うことができます。地理的に隔てられた大地と大地を新幹線でつなげていく――そこに、分断され隔てられた人々が、一つの国民として統合されていく象徴を見出すのです。

このCMで「宇宙人」は、その報告を次のセリフで締めくくっています。

「ただ、この惑星の新幹線は妙にテンションが上がる」

この「テンションが上がる」背景には、世紀を超える長い年月の間、統合しようと「夢」見ながら、遅々として統合されず、隔てられ続けてきた日本国民同士が、ようやくつなげられることに対する「喜び」があります。

それは少々大げさに言えば、冷戦崩壊の象徴であるベルリンの壁の崩壊によるドイツ国民の歓喜と同質の構図を持っている、と言っても差し支えないでしょう。

そしてそんな「歓喜」は、北海道の真逆に位置する「九州」でもまた、巻き起こりました。

http://matome.naver.jp/odai/2130886019676908401

これは、九州新幹線改行を祝う、「祝!九州」というキャッチコピーのCMです。

ただし、その開業が東日本大震災のまさに翌日であったため、その放映が数回で打ち切られた、まさに「幻」のCMです。ですが、新幹線沿線の人々がまさに歓喜の声を上げる「人間ウェーブ」の映像とそのCMソングを鮮明にご記憶されている方は多かろうと思います。

なぜならこのCMは、ネット上で大人気となり、平成23年の震災関連以外の動画の中で、最多アクセス数(!)をたたき出したものとなったものだからです。

つまり、私たち日本人は九州新幹線の時にも、「妙にテンションが上がった」わけです。

確かに、この盛り上がりは「妙」と言えば「妙」――しかし、人間とはそもそもつなげられていくことそれ自身に、えも言われぬ喜びを感ずる、何とも「妙」(不思議なまでにすぐれているさま~広辞苑より~)な存在。

ただし――その「妙」な歓喜は、そこに物語がなければわき起こるものではありません。

「一つのドイツ国民」という物語があったからこそ、ベルリンの壁の崩壊にあれだけの歓喜が生まれたのであり、同様に、北海道も九州も皆同じ日本だ――という「物語」があるからこそ、そこに歓喜が生まれるのです。

しかも、「歌は世につれ、世は歌につれ――」、その物語は、津軽海峡の冬景色の中でたたずむ一人の女や、はるばる何十時間もかけて函館までやってきた男――そんな日本人の心の歌を日本国民全体が共有し、皆が口ずさむことを通して、さらに何度も何度も再生されていくのです。

それはもちろん、昭和演歌、だけの世界ではありません。五年前の九州新幹線開業を祝う日系スウェーデン人マイア・ヒラサワの曲『Boom!』(=轟き!)も、そして、その開通から五周年の機に企画されたコブクロの企画もまた、「音楽×国民物語×新幹線」の方程式を踏襲しています

http://www.jr-odekake.net/navi/sanyo-kyushu_5th/cm/

つまり、私たち日本人は、その心の奥底に、私たちは一つの家族、一つの日本国民なのだという「国民物語」を未だに持ち続けているのであり、そんな物語が「潜在」しているからこそ日本列島が新幹線を通して「現実」に一つにつなげられていったのです。

そしてまさに今、九州最南端の鹿児島からつながる新幹線は、北の大地、北海道まで繋がろうとしています。

函館は、その規模から言えば、北陸の金沢や富山より(合計で90万人弱)も小さく(27万人)、北陸新幹線ほどの大きな旅客数も経済効果も見込めないと言われています。

しかし、青函が新幹線で繋げられる事の意味は、観光客の増加や輸送量の増大などでは計り知れぬ意味を持っています。

北の大地まで新幹線でたった4時間で東京から到達できる――その意味をかみしめるためにも是非、本州の方は一度新幹線で函館まで訪れてみてください。そして、北海道の方々は新幹線で本州を訪れてみてください。

必ずや、そうした新たな乗車体験は、北海道と本州の人たちの互いの土地に対する認識を変えるに違いありません。

「えっ、電車なのに、こんなにスグにここまで来れるんだ――(!)」 筆者が九州新幹線で、熊本、鹿児島に最初に訪れた時に率直に感じた「驚き」を、多くの方々がその函館新幹線を使った時に感ずるに違いありません。

そうした新たな「驚き」は、人々の振る舞いに少しずつ、しかし着実に確実に様々な変化をもたらしていきます。そしてそうした変化は、北海道と本州の間の新しい国民物語を紡ぐ契機をもたらすに違いありません。

それは、二人の男女が結ばれていく「恋愛映画」の中に物語があると同時に、結ばれた二人の男女が新たな家族を築きあげていく「夫婦映画」「家族映画」の中にも物語があることと同じなのです。

―――いずれにせよ、新幹線をはじめとした交通インフラを語るとき、経済や効率性の視点からのみでなく、かつての日本人が歌や映画を通してその意味を心で感じていたように、民俗的視点、物語的視点から捉えていくことを忘れてはなりません。

それができる限りにおいて、わたしたち日本人は日本人のままで居続ける事ができると同時に、バラバラになってしまった近代の私たちをつなぎとめるインフラを手中に収めていく事ができるのです。そしてそれらを通して私たちはより一層、日本人として豊穣で豊かな存在になれるのです。

新幹線をつくるのは私たち日本国民ですが、その新幹線こそが、新たな「国民物語」を作り出しているのであり、そんな国民物語が私たち日本人を日本人たらしめる根源的契機を与えています。

つまりそこには、国民と物語、そしてインフラという巨大な「循環」が存在しているのであり、この循環を旺盛に展開できた国民だけが、滅び去らずに繁栄し続けていくことができるのです。

私たち日本国民も、そんなインフラと物語を巡る大車輪を回し続けていくことができる事を、心から祈念したいと思います。

PS:国民がインフラをつくり、インフラがさらに新たな国民を作り上げていく――その大きな循環にご関心の方は是非、下記をご一読ください。

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