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【藤井聡】なぜ、事業仕分けは、「おぞましい」のか

なぜ、事業仕分けは、「おぞましい」のか


京都大学 都市社会工学専攻 藤井 聡


 事業仕分け——現政権が嬉々として取り組むこの行為に対して「おぞましい」と感じない者は、どうかしてるのではないか——、
 とすら感じてしまうのは、決して筆者一人ではなかろう。本稿ではその「おぞましさ」について改めて考えてみたいと思う。

 そもそも「おぞましい」と感ずるのは、そこに「偽善」の影を見て取るからだ。偽善とは「善い事をしている」という体裁を取りながら、実際には別の「隠された意図」のために行う見せかけの善行を言う。
 言うまでもなく、事業仕分けは、「税金の無駄遣いをしている悪い輩どもを公衆の面前で懲らしめ、国民みんなの......ために...その税金を使うようにするためのものだ」ということになっている。しかし少なくとも筆者には、次の様な三つの「隠された意図」の影を「感じ取る」ことができる。

 第一は「世論の支持率をあげたい」というあからさまに利己的な意図、第二は「世論の“威”を借りながら、選挙公約で掲げた“政治主導”を実現したい」という意図、そして第三は「(ともすれば野党時代には潰したくとも潰せなかった諸勢力に属する)特定組織を “解体”したい」という意図である。

 もちろん、動機や意図を「証明」することは不可能だ。しかしいずれも関係者の発言から窺い知ることができるし、マスコミでも指摘されているので同意される方も少なくないと思う。無論いずれもそれぞれに“おぞましい”のだが、とりわけおぞましく、かつ、深刻な被害を国民にもたらし得るのは、第三の意図である。

 そもそも国家権力による“法人”の解体は、“個人”でいうなら「死刑」に値する。だから、死刑判定のために膨大な司法手続きが必要な様に、特定の組織を国家権力が「解体」することを正当化するためには、その組織の「悪」を正当な手続きで「証明」することが不可欠だ。つまり、死刑にせよ解体にせよ、国家権力でそれを断行する以上、国家は自らの所業がもたらす「結果」に対して「慎重」たらねばならぬ責務を負っているのだ。だから公益に関わる法人の解体や解体に結びつくような仕分け作業のためには、「その法人・事業は公益を増進させない」ということを明らかにする「慎重さ」を持つ「責務」が是が非でも求められるのである。

 はたして、現政権にそんな「慎重さ」があるのだろうか?
 仕分け対象となった全国の建設弘済会や建設協会が担ってきた建設事業の各種円滑化による公益の損失分を他の事業で本当に補償し得るのか、運輸政策研究機構が蓄積してきた需要予測技術や、関連財団が提供してきた建設技術の研修機能等は、本当に国政に不要なのか、そして、それら組織関係者の誇りとその家族の生活は公益に含まれぬのか、といった諸問題は、数日の下調べと数十分の質疑で解決できる様なものでは、絶対に、天に誓って、あり得ない。

 無論、事業仕分けにはこうした「結果に対する慎重さ」が不在である代わりに、完全公開で行うという「プロセスの透明性」だけはある、ということは指摘しておかねばなるまい。それはさながら「透明性が必要だ!」という昨今の論調を逆手に取り、「透明であれば、結果がどうあれ何をやっても構わない」とでもいわんばかりである。

 つまり———、①「国民の利益」のためにと口にしてはいるものの、②対象組織の有益性を国民が知らぬ事をいいことに、③プロセスの透明さを装いながら、その透明さの陰に隠れて「特定組織の解体」を意図して、④最終的に「国民の不利益」をもたらしかねない仕分け作業を、⑤「国家権力」を振りかざしながら繰り返す———それこそが「事業仕分け」なのだ、という疑義が十分に存在し得るのである。

 もちろん、この様な意図に関わる疑いを“証明”することは不可能だ。だから筆者のこの言説を言い過ぎではないかとお感じの向きもおられるのかも知れない。しかしもしこの描写が「真実」であるなら、誰もがおぞましく感じざるを得ぬ卑劣さを見て取るに違いない。だからこそ事業仕分けの実情を一般国民よりも知る者が、最終的な判断を国民に委ねながらも、こうした「真実」の「可能性」を公に発言していくということは、義に叶うものでこそあれ、不当なる所業であるはずなどないのである。

日刊建設工業新聞、12.6.2010.


出典:藤井研究室
http://trans.kuciv.kyoto-u.ac.jp/tba/images/stories/PDF/Fujii/201006-201012/editorial/newspaper/kensetsu20101206.pdf

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