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【藤井聡】大切な「迅速さ」欠落

大切な「迅速さ」欠落


京都大教授 藤井聡


 今回の復興構想会議の「復興への提言」は、以下の三点において、大多数の国民の願いからも、そして、被災者の思いからも大きく乖離しているのではないか。

 第一に、多くの国民は、復興の迅速さの不在に大きないら立ちを覚えている。事実、この提言の中には、復旧・復興を急がねば手遅れになる、という焦燥感が希薄だ。しかし現実には今、被災地では「住み慣れた街を離れると決めた人」「自分の生業を廃業しようと決めた人」が、一日一日と増え続けている。そして、そういう人々が増えれば増えるほどに、被災地復興の「潜在的な力」はそがれていっている。 そうなれば提言が主張するどんな「技術革新」があろうとも、復興は遠のいていく。だからこそ、「大けがの治療」は「迅速さ」こそが命であるように
「大震災の復興」もまた「迅速さ」こそが「何よりも」重視されるべきなのだ。提言には、常識中の常識と言うべきこの一点の認識が欠落している。

 第二に、東日本の地の復興のビジョンとして「ふるさとの再生」というイメージをおぼろげに持っている国民は多かろうと思う。そして「単なる復旧ではなく創造的な復興を」という 首相の注文に応える形で議論されたエコタウンやイノベーションといった言葉に、ある種の違和を感じているに違いない。そして何より、被災者の多くがそんな「創造的なコンセプト」を望んではいないだろう。「もしもかなうのなら、3月11日までのあの平穏な暮らしに──仮にそれがエコでも革新的で無かったとしても──戻りたい」という、多くの場合遺憾ながらもかなわぬやも知れない「思い」を深く抱いていることだろうと思う。そうである以上、復興事業は「創造的」である以前に、そうした被災者の「思い」に全力で応えんとすることこそが「基本」であるべきだ。部外者の専門家が提言する創造性は、そうした「基本」に対する付加物以上のものではない。

 第三に、 提言の中では「次の世代に負担を先送りしない」とうたわれて復興財源のための増税が盛り込まれている。耳あたりの良いこの言葉は、実は、被災地を見殺しにしかねない恐ろしい「冷徹さ」を秘めている。例えば家族や同胞が大けがをした時に「うちの家計はこうだから─── 」と考える様な家長は、家族を見殺しにしかねない冷徹な人物だ。そんな時は「オカネの事は俺が責任を取る。とにかく、全力で治療をしてくれ」と頼むのが、家族を愛する家長の姿だ。仮にその借金が次世代に残ろうとも、その次世代が「生き残る」ことこそが優先されるべきだ。「死」ほどに重い「次世代への負担」などあり得ないではないか。

 こう考えてみれば、「つながり」をはじめとしたさまざまな美辞麗句が並べられた 提言には、被災地に対する深い同胞意識が十分にあるようには思えない。もしもそんな同胞意識が強くあったなら、「生業の復活」を中心とした「ふるさと再生」を大規模財源と圧倒的迅速さの下で復旧・復興を進めるべし、という 復興構想を、それこそ政治主導の下、例えば3月中下旬の時点でとりまとめることすら可能であっただろう。そして、会議に諮問すべきは 構想などではなく、それを実現するための「具体的諸事項」であったはずなのである。

河北新聞(朝刊)2011 年6 月26 日

出典:藤井研究室
http://trans.kuciv.kyoto-u.ac.jp/tba/images/stories/PDF/Fujii/201101-201106/newspaper/fujii_kahoku.pdf




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