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【藤井聡】大復興・防災計画が経済成長を導く

藤井聡教授FBよりシェア


先日申しておりました「週間東洋経済」の記事をアップしました。

あわせて、当日の紙面(原田氏の原稿もあわせたもの(pdf))も、アップしました。
こう並べられると(↑)、少なくともぱっと見た印象の上では、何が正しいのか分かんなくなっちゃいそうですね(むしろ世論では「公共事業無駄」が趨勢だというのを加味すると、あちら側の方が正しい印象になっちゃうのかもしれませんね)。でもそうなると、十分な復興予算が迅速に執行できず、復興が中途半端に終わる可能性がまたまた増えてしまう........ということが、本当に残念に思います。




復興費用は47兆円~大復興・防災計画が経済成長を導く~


京都大学大学院教授 藤井聡


復興費用は約47兆円

 政府は,東日本大震災の被災地の復興期間を10年間とし「少なくとも総額23兆円」の復興事業を実施する方針を決めている。

 多くの国民が,この金額が十分なのか否かはっきりと判断できないのではないかと思う.例えば,大和総研の原田泰氏は,復興費用は多めに見積もっても「6兆円程度」であり,23兆円は極めて過大だと『週刊新潮』『Wedge』等の大手メディアにて繰り返し主張している.彼は被災した資産は,日本の人口一人あたりの物的な資産額である975万円に被災者数50万人をかけて約4・9兆円程度,そして,「用心のために少し多めに考え」て「約6兆円程度」ではないか,という.

 しかしこの試算は「不当」である疑義が濃厚だ.

 第一に,もしもこの議論が正しければ,合計6兆円に上るこれまでの政府の補正予算にて事足りることとなる.しかし現地に赴けば全く復興が進んでいないのは一目瞭然だ.

 第二に,原田氏は「人口一人あたりの物的な資産に人口をかけて被害額を推計」しているのだが,これはとりわけ今回の被災地の様な地方部においては明確に「不当」な方法だ.なぜなら「住宅」ならばいざ知らず,道路,鉄道などのインフラや工場等の生産施設が,その土地の人口に「比例」している筈はないからだ.そもそも道路や鉄道は,全く人が住んでいない区間にも「人里と人里を結ぶインフラ」として作られるものだ.

 第三に,公表されている地震保険の支払い金額が既に1兆円を越えるのだが,それを踏まえると,被災した物的資産額が「6兆円程度」で収まるとは考え難い.例えば,阪神・淡路大震災の時の地震保険の支払い額は783億円であったが,直接被害額はその「127倍」の9・9兆円であったし,また新潟県中越地震や新潟県中越沖地震の直接被害額は地震保険の支払額のおおよそ二百倍程度だった.とはいえ,今回の被災三県の地震保険の加入率は比較的高い地域として知られているので,今回の直接被害額が,地震保険の支払金額約1兆円の百倍から二百倍であるとは推計し難い.だからそうした地震保険の状況の差異を加味して地震保険金額の支払い額から直接被害額を想定すると,「約47兆円」と推計されることとなる.

 それを考えれば,原田氏の試算は言うに及ばず政府の「少なくとも23兆円」という予算もまた,全く不十分なものである可能性が危惧される.しかも,上記の筆者の試算には原発対策も全国の防災対策も含まれてはいない一方で,政府の23兆円という数字には双方とも含まれているのだ.

 いずれにしても,政府には是非とも十分な財源を確保し,一日も早く被災地の“ふるさと”を取り戻すための大規模な復興事業を展開されん事を,心から祈念したい.(ふるさと再生)


年間20兆円規模の「列島強靱化」を

 一方,我が国日本は今「首都直下地震」「西日本大震災」という超巨大震災の「連発」の危機に直面している.過去二千年の歴史を振り返れば,今回のような東北沖の巨大地震が発生した時には首都直下地震が「10年以内」の間隔で「必ず」発生しており,西日本を中心に巨大な破壊をもたらす東海・南海・東南海地震は東北沖の巨大地震の四例中,実に三例において「18年以内」にて発生している.つまりあれだけの巨大な地殻変動が生じた場合には,その周辺の断層やプレートの境界面の破断が一気に連動する危惧が極限にまで高まっているのだ.そしてそれらの巨大地震は,三大都市圏を中心とした諸都市諸地域を直撃し,二百兆円から場合によっては五百兆円を上回る程の水準になるだろうことが,政府の中央防災会議の試算から予期される.

 こうした「最悪の事態」を覚悟し,我が国が「致命傷」を受ける危険性を最小化するためには,徹底的な「日本列島の強靱化」が不可欠だ.国会議事堂,中央官庁,原発,そして何よりも皇居等をはじめとした様々な建築物とインフラの徹底的な耐震強化,そして津波堤防等の強化が必要だ.それと共に地震の直撃が危惧されている三大都市圏の各種都市機能の日本海側や北海道,九州等への「分散化」を企図し,各地方部に新幹線や高速道路,港湾等の整備を大規模に展開することが必要だ.これらに加えて,事業所の移転の促進を図る各種制度,まさかの有事を想定した防災教育や企業のBCPの促進,エネルギーや食料の自給率の向上や備蓄の確保も不可欠だ.

 こうした日本の国の総力を挙げたソフトからハードに至る実に様々な「列島強靭化」を,巨大地震が現実に発災する迄の例えば今後十年の間に集中的に取り組まねばならない.そのためには,筆者の試算によれば年間10兆円~20兆円程度の財源が,十年間程度必要となる.

 もしも今我が国がインフレであるなら,大規模な政府の財源調達はクラウディングアウトを導いて金利の高騰を招き,財源確保が困難な事態をもたらすだろう.無論,それでもなお,国家的危機に対峙するためには列島の強靱化を進めなければならぬところなのだが,皮肉な事に今は「幸い」にもデフレであり,建設国債による政府の財源調達が容易に可能な状況にある.むしろそれだけの大規模な財政出動はいわゆる「ニューディール政策」としての意味を帯び,デフレ脱却ひいてはGDPの拡大,すなわち「経済成長」をもたらす事ともなろう.

 言うまでもなく,そんな経済成長は「日本経済の強靱化」と言うことが出来るだろう.つまり,大規模な「列島強靱化」の展開は,国土や産業構造のみならず,日本経済そのものの強靱化を果たすものでもあるのだ.我が国政府には是非,我が国が今直面している危機を過不足無く冷静に理解され,列島強靱化を最重要の政治課題と捉えられんことを,心から祈念したい.

 ※本稿のより詳細な議論は『列島強靭化論』(文春新書)を参照されたい.


 週間東洋経済, 2011.12.3, pp. 70-73.
http://trans.kuciv.kyoto-u.ac.jp/tba/index.php/b4/job/133-toyokeizai.html


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