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【藤井聡】「公共事業が日本を救う」ことの数値的根拠~

「デフレ」の本当の恐ろしさを知るべし

~「公共事業が日本を救う」ことの数値的根拠~



京都大学大学院教授  藤井 聡


 世間では、「デフレ不況」と言う言葉が、ある種のブームとなっているようだ。「デフレ」を冠したいくつもの書籍が出版され、「デフレ」の原因や結果についての様々な言説が世間に流布されている。

 しかしそれらの中には、どう考えても正当化し難いものが多い。代表的なのが、「デフレで値段が下がっていくんだからいいじゃないか」という言説である。この種の言説が見落としているのは「値段が下がる」ということは、巡り巡って皆の給料が減っていく、という重大な事実である。

 もし世間が、90 年代後半から続くデフレによって我が国の平均所得が「100 万円以上」も低下してしまっているという「事実」を知れば、こんな説は単なる珍説にしか過ぎないと理解するだろう。

 あるいは、(最近のベストセラーでもある『デフレの正体』なる書物で主張される)「デフレは少子高齢化で人口が減っているからだ」という説もまた珍説にしか過ぎない。そもそも人口が減っている国はいくらでもある一方で、深刻なデフレに苛まれているのは日本だけだ。日本を除く世界中の国々ではどこでも、人口が減ろうが増えようが「一人当たりのGDP」が増進し、経済成長し続けているのである。だから、デフレを説明するなら、人口の増減ではなく、一人当たりのGDP の減少の理由を説明しなければならないのだ。

 言うまでもなくデフレというのは「供給に対する需要不足」である。だから(潜在供給力の維持しつつ)デフレを解消するには「需要を拡大」する他に道はない。そして、デフレ下では民間は投資を控えるのだから、結局は「政府による財政出動」以外にデフレを解消する方法はない。



図 世界各国の実際の名目GDP の推移と、90 年代に大規模公共投資(デフレ対策)を行っていたと仮
定した場合に想定され得る日本の名目GDP の推移

 ところが、上記のような「デフレでも良いじゃないか」という言説は「デフレ対策をしなくてもいい」という議論に繋がり、「人口減少だからデフレは避けられない」という言説は「デフレに対する抜本的な対策なんてない」という議論を惹起し、結果としてデフレに対する「無作為」を導き、デフレをますます深刻化させている。

 こうした珍説が世論の中で放置され続けているのは嘆かわしいばかりだが、もし、皆がデフレが本当に恐ろしいものであるということを知れば、もっと真剣にデフレを議論し、こうした珍説は世論の中から消え失せるのではないかと思う。

 かくして筆者の研究室では、「デフレによる経済損失」を試算してみた。

 計算方法は至って簡単である。「日本がこれまでデフレ対策を行っていたと仮定し、世界各国の経済成長率と同じだけ日本経済も成長していたとしたら、日本のGDP はどの程度だったのか」を計算してみたのである(1995 年~2008 年の名目GDP)。そうすると、2008 年の我が国のGDP は1193 兆円と推計された。現在のGDP が約500 兆円だから、2008 年1年で我が国はデフレのせいで約700 兆円もの富を失っていることになる。こうした計算を前年時について行いそれを累計すると、なんと4050 兆円という空前の数値となった(図をご参照いただきたい)。

 無論、(筆者は全くそう考えてはいないが)「日本には外国と同程度の経済成長をする能力などなかったのだ」と言う向きもあるかも知れないので、世界の平均経済成長率の「三分の一」の低い水準で成長したケースで計算してみると、2008 年時点の日本のGDP は751 兆円、90 年代からの損失累計額は1920 兆円となった。

 お分かり頂けただろうか。この事は、次のような恐ろしいことを意味している。

 つまり、日本がこれまでに数十兆円から百兆円規模でのデフレ対策をきちんと行っておかなかった為に、我々は2000 兆円から4000 兆円もの富を失ってしまったのである。

 それだけの富があれば、財政赤字なんてもちろん無くなっているだろうし、様々な良質なインフラを日本中に整備できただろうし、いろいろな街に良質な公園や路面電車(LRT)を整備することだってできたに違いない。各企業は膨大な研究開発費で様々な技術開発を行いより強靱な国際競争力を身につけているであろうし、日本全体の世界におけるプレゼンスも今以上に大きく、尖閣諸島や北方領土等の領土問題も今日ほど深刻なものとはなっていなかったかも知れない。そして何よりそれだけの富を我々が手にしていたのなら、どれだけの会社が倒産せず、どれだけの人々が自殺せずにすんだのだろう———。悔やんでも悔やみきれぬ話しではあるが、失った富や命は、もう二度と戻らない。

 しかし、もうこれ以上の損失を食い止め、我々の国を今一度力強く豊かにしていくことならば、今の我々にだってできるはずだ。言うまでもなく、我が国の現状の「デフレ」は深刻な水準だ。だからこそ、仮に数十兆円や数百兆円かかろうが、徹底的なデフレ対策を、公共事業を中心として行うことができるなら、その見返りが、何十倍、何百倍もの「何千兆円」という未曾有の水準になって返ってくるのだ。

 これこそが、「公共事業が日本を救う」ことの、数値的根拠なのである。

 だからこそ、与党にせよ野党にせよ、政治家にせよ官僚にせよ一般の国民にせよ、我々は皆、90年代から犯し続けてきた巨大な政策的過ちを冷静に理解し、認識しなければならないのだ。そうした冷静なる理解に基づき、我が国が徹底的な財政出動を通じたデフレ対策を図らんことを、一人の国民として、そして一人の学者として、強く強く、祈念するばかりである。

2010 年12 月22 日(特別寄稿) 日刊建設工業新聞

出典:藤井研究室
http://trans.kuciv.kyoto-u.ac.jp/tba/images/stories/PDF/Fujii/201006-201012/editorial/newspaper/kensetsu20101222.pdf

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