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【藤井聡】青木泰樹 『飯田リプライの誤謬』

-藤井聡教授FBよりシェア-

当方と飯田氏との「討論」に,青木先生からも原稿をいただきました!

 下記原稿は,「飯田氏からの(藤井に対する)リプライ」に対する評論です.

 当方の「飯田氏からのリプライ」に対する「再コメント」は,論点を絞り,その絞った点について(できるだけに完璧に 笑),一般の方でもご理解いただく事を企図しながら論証する事を企図したものでしたが,青木先生のこのご原稿は,より広い側面も含めた,包括的な評論となっております.簡潔な内容ですが,一般の方でも十分お読み頂ける内容かと思います!

 なお,当方の重要点として上げた,「(B)10億円の穴を掘って埋める事業(C)10億円の定額給付金支給.は同一であると飯田氏は言うが,これは同一ではない(!)」,という当方の主張についても,青木先生はコメントされております.大変ありがたい事に,青木先生は,「(飯田氏は)BとCは統計上の差はあっても同一の効果しかもたないとを論じています。これは明らかに誤り。」と,当方を明確に支持いただいておりますw

 ちなみに繰り返しますが,この論点は,デフレ脱却のあり方を考える上で,極めて重要な論点ですので,雰囲気に流されず,是非,論理の中身を後吟味頂けると幸いです.

 以上,ご紹介まで!

===========
                     平成26年2月24日
『飯田リプライの誤謬』
                        青木 泰樹
1.総論:ベッドの長さに合わせて足を切る愚
 飯田氏は、主流派経済学の理屈によって現実経済を説明しようと試みております。逆から見れば、現実を純粋理論の枠に押し込めようとしています。収まらない部分を「統計の泣き所」と主観的に規定し、また別の箇所では本来比較の対象とならないマクロレベルと産業レベルを比較するといった一般では考えられない理屈を用いて強弁しています。しかし、強弁すればするほど、論理のほころびも目立ってきます。「カラスは黄色い」と言い張るよりも、自分の着けている黄色い眼鏡をとることをお勧めしたいものです。ここでは、飯田氏の主要な誤解(曲解)について簡単に指摘します。

2.飯田氏の曲解①:「政府支出がSNAの泣き所」の無意味さ
 一般にGDPに計上されるのは「市場取引の対象物(店頭で売っているもの)」ですが、政府サービス、例えば警察官の治安維持サービスは店頭で買うことはできません。それゆえ、政府支出はサービスの評価として費用計算によって計上されます(もちろん、公務員の給与も民間に準じて決定されますので、突出したものにはなり得ない)。これはSNAの原則ですので何が問題なのかわかりません。この規定がなければ正確な経済規模は測れないのです。
 飯田氏は、公共財・サービスに関して客観的な評価ができないと論じており、政府支出に関する三つの例を挙げています。
(A)10億円の道路整備事業
(B)10億円の穴を掘って埋める事業
(C)10億円の定額給付金支給
 飯田氏は、「AとBではGDPが10億円増加するが、Cでは変化しない」と述べています。続けて「実質的にBとCは同じであり、両者のGDPに与える影響が異なることが統計ルールの不備(泣き所)である」と結論づけております。
 何のことはない、「泣き所」の論拠は、飯田氏が「所得移転」と「支出に伴う所得形成」を混同しているだけです。給付を受けても使わなければ付加価値を生み出さないのは自明の理。それゆえGDPが増えないだけです。

3.飯田氏の曲解②:給付金(減税)と財政出動の効果
 飯田氏は、財政出動と給付金(減税)の経済効果について比較しています(BとCの比較)。そして、BとCは統計上の差はあっても同一の効果しかもたないとを論じています。これは明らかに誤り。政府支出乗数は明らかに減税乗数(租税乗数×マイナス1)を上回ります。政府が直接支出するのと比べると、民間人は貯蓄する分だけ支出が減るからです。
 さらに飯田氏は「支出性向の高い所帯への所得移転は景気刺激効果があるため、財政出動の優位性は失われる」と論じています。彼は、明らかに給付金(の支出)と財政出動の経済効果を支出額によって測っているのです。ところが、後段では一転して、両者の経済効果の差は「どの程度役立つ事業が行なわれるか」に依存するとしています。効果の測定基準を「支出額(量的側面)」から「役立つ(質的側面)」へすり替えているのです。
 経済学では量的効果は論じられても、質的効果を論じることはできません。唯一の評価基準は、社会的厚生です。飯田氏も「厚生の観点から導かれる望ましい土木・建設事業は幹線や都市部を中心にしたものになると考えられます」と論じています。しかし、この厚生概念はパレート最適に基づくものです。それは、社会的厚生を個人の主観的な効用の集計として(序数的に)捉える概念です。一般的なミクロ的基礎付けのある主流派マクロモデルにおいて、効用関数の中に公共財・サービスは入っておりませんので、本来、厚生概念に基づいて「役立つ」公共事業を決めることはできません。公共財の存在量の多寡によって社会的厚生は影響を受けないのです。
それゆえ、飯田氏は「パレート最適状態=最も経済効率が良い状態」であることを念頭に、役立つ公共事業として利用者の多い都市部の公共事業を挙げているのでしょう。すなわち、「役立つ公共事業=効率的な公共事業」であると。
 
4.飯田氏の曲解③:近視眼的な産業レベル・ボトルネック論
 飯田氏は、土木建設産業における人手不足および人件費上昇の問題から財政出動よりも低所得者層への給付金が景気対策として優先度が高いと論じています。しかし、これも辻褄があわない。今しがた、給付金と財政出動の効果は、「どの程度役立つか」にあると規定したばかりですから。
 役立つ事業が、産業レベルにおける供給制約により、優先度の低い事業の後塵を拝せざるを得ないことを甘受すべきであると考えているのでしょうか。なぜ、現状において役立つ事業が円滑に実施できないのかについての反省および対策を講じることが優先されるべきだと考えないのでしょうか。公共事業はフロー効果ばかりでなくストック効果があります。長期間にわたり社会に便益を与え続けるのです。その効果を無視した議論は近視眼的との誹りを免れないでしょう。給付金にはフロー効果しかない。それも、これまでの経験から全額支出に回るとは限らないのです。まさに飯田氏が使いそうな表現を用いれば、「ばらまき」に近い施策ではないでしょうか。

5.飯田リプライの帰結
 飯田氏は、公共事業に対する多少のリップサービスを交えながらも結局は、「現在の日本の財政状況で、公共事業を相似拡大的に増加させていくのは現実的な計画ではありません」と結論づけております。公共事業は補修事業を中心にコツコツ少しずつやっていれば良いとの印象を抱かせます。
 飯田氏の論点は、主観的価値論の現実妥当性、政府活動の無意味性、経済効率至上主義そして財政均衡主義といった主流派経済学の基盤そのものに立脚したものに思えます。現実的な議論をする場合、長期的な視点や社会全体の認識といった観点が必要でしょう。社会科学の家の中のほんの小さな経済学の部屋にいて、さらに部屋の一隅だけを照らすがごとき経済学説を用いて、家の外を眺めることは不可能なのです。
                          以上



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